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政治

2023.01.26

中学生が手嶋龍一氏と「ウクライナの戦争はなぜ防げなかったのか」を考えた

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東京都渋谷教育学園渋谷中学校の生徒が外交ジャーナリスト手嶋龍一氏とウクライナ戦争を考えた(写真=曽川拓哉・コラージュ加工=中根涼花)

前編「中学生が手嶋龍一氏と、ウクライナ情勢そして「インテリジェンスの戦争」を考えた」中編「中学生が手嶋龍一氏と学ぶ戦争の構造、プーチン戦争下「公然の密約」」に続いて、都内中学生6名が外交ジャーナリストの手嶋龍一氏を囲んで集まった。

手嶋氏はNHKワシントン支局長時代の2001年、9・11テロに遭遇し、現地からの11日間24時間連続中継を敢行したことで知られる。また日本の出版界に「インテリジェンス小説」のカテゴリーを樹立した作家でもあり、最新作『武漢コンフィデンシャル』(小学館刊)が好評、発売中のForbes JAPANでは小説「チャイナ・トリガー」を連載中だ。

最終回の今回は、かつてハーバード大学国際問題研究所フェロー(特別研究員)として、核の脅威を身をもって知る専門家たちに「なぜキューバ危機は全面核戦争に発展しなかったのか」を聞いた経験も持つ手嶋氏が、核戦略分野の「理論」について、核兵器をめぐる「恐怖の均衡」について、そして進行中のウクライナ戦争について、中学生たちとともに考える。

手嶋氏を囲んだのは、前編、中編に続き、東京都渋谷教育学園渋谷中学校の青井順生さん、江見理彩さん、柴諒一郎さん、2年生の伊藤澄佳さん、釈迦戸都さん、山澤綾乃さんの6名である。

前編> 中学生が手嶋龍一氏と、ウクライナ情勢そして「インテリジェンスの戦争」を考えた はこちら
中編> 中学生が手嶋龍一氏と学ぶ戦争の構造、プーチン戦争下「公然の密約」 はこちら


「核の抑止理論」は「ゲームの理屈」?

それでは今回のレクチャー・シリーズのまとめに入りましょう。核戦力の専門家たちは「相互確証破壊」とか「核抑止体制」といった用語をしばしば使います。これは中学生の皆さんにはきわめて難解な専門用語のはずです。でも、「数学や物理学の難解な理論」とは根本的に異なります。でも、核戦略の分野のそれは、理論が込み入って難しいのではありません。

思い切っていえば、核戦略の専門家が、精緻な理論を組み立て、それを現実の外交・安全保障に適用し、核戦争が起きないようなシステムを確立した訳ではありません。米ソの全面核戦争が現実に起きなかった──。その現実を後から説明してみせただけの、いわば一種の“後知恵”だといってもいいでしょう。それを「核の相互確証破壊」と難しく表現しているにすぎません。

冷戦期の米ソ両核大国は、膨大な長距離ミサイルを手に対峙していた。どちらかが1発でも先に核のボタンを押してしまえば、相手も核ミサイルを発射して報復に出る。その結果、米ソ双方の大都市には次々に核の刃が降り注ぎ、地球は滅んでしまう。この世にも恐ろしい結末を米ソの政治指導者も知り抜いているため、核のボタンに手をかけることができなくなった──。そんな現実を「核の相互確証破壊」と難しく表現して見せたにすぎません。

こうした「核の抑止理論」が確立されたために、核戦争が阻止されているわけでは決してないのです。核の戦略理論家たちは「互いに核兵器の使用をためらわせることを意図したもの」と説明します。だが、全面核戦争が結果的に起きていないという現実を後から理屈付けしたに過ぎない。この「ゲームの理屈」を無視するような狂気の政治指導者が現れれば、全面核戦争が起きてしまうかもしれない。
次ページ > 「世界は脆い」を教えたキューバ危機

編集=石井節子 撮影=曽川拓哉

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