手嶋氏はNHKワシントン支局長時代の2001年、9・11テロに遭遇し、現地からの11日間、24時間連続中継を敢行。当時は「テレビをつけると手嶋氏」の状況が話題にもなった。日本の出版界に「インテリジェンス小説」のカテゴリーを樹立した作家でもあり、最新作『武漢コンフィデンシャル』(小学館刊)も好評、発売中のForbes JAPANでは小説「チャイナ・トリガー」を連載中だ。
今回はウクライナ戦争の現況に至る世界について、「キューバ危機」を題材に考える。自分がそこにいたら、どんな決断をするか、どう動くか。
手嶋氏を囲んだのは、前編に続き、東京都渋谷教育学園渋谷中学校の青井順生さん、江見理彩さん、柴諒一郎さん、2年生の伊藤澄佳さん、釈迦戸都さん、山澤綾乃さんの6名である。
前編>中学生が手嶋龍一氏と、ウクライナ情勢そして「インテリジェンスの戦争」を考えた はこちら
ヒロシマ・ナガサキ以降も核戦争の危機は「2度」あった
後編で「キューバ核ミサイル危機」とは何かについて、渋谷教育学園渋谷中学校の皆さんと学び、ともに体験する前に、第二次世界大戦の末期にヒロシマ・ナガサキに原子爆弾が投下されて以来、核を巡る情勢を見ておきましょう。ヒロシマ・ナガサキで夥しい人命が喪われて以来、ウクライナの地で戦争が繰り広げられている現在まで、われわれは核戦争の危険とともに生きてきました。幸いなことに、私たちが暮らす世界は、全面的な核戦争を体験することはありませんでした。人類はなぜ“核の地獄”を見ずにすんだのでしょうか。
実はこの間も、核戦争の危険がなかったわけではありません。ヒロシマ・ナガサキの悲劇の後、われわれは2度も核戦争の淵に立たされていたのです。
これから皆さんと共に映像ドキュメンタリーを見ながら体験する1962年の「キューバ・核ミサイル危機」がそのひとつです。そして二回目はさらにその7年後、日本海を挟んですぐ対岸で持ち上がった1969年の「中ソ核戦争」の危機です。
キューバ危機を体験する前に、知られざる「中ソ核戦争」について少しだけ説明しておきましょう。