政治

2023.01.25 09:30

中学生が手嶋龍一氏と学ぶ戦争の構造、プーチン戦争下「公然の密約」

皆さん、わずか半世紀余り前に、日本列島のすぐ前浜で、このように核戦争の危機が静かに進行していた──思い描くことができるでしょうか。そして、ウクライナの戦いがいま繰り広げられ、われわれは現在もなお“核の時代”のまっただなかに生きています。

スマホで仮想空間の戦争ゲームに夢中になっているひとたちは、現実の危機を思い描く想像力が鈍感になってはいないでしょうか。それが気がかりでなりません。核戦争の危機はいま、我々の目の前にあるのです。それを実感するためにも、過去に持ち上がった核戦争の日々を追体験し、そこにわが身を置いてみようではありませんか。これから1962年10月に起きた「キューバ核ミサイル危機」の13日間をドキュメンタリーを共に見ながら危機の日々に分け入ってみましょう。

13日間のあの危機を「同時進行で体験」しよう

ただ、私たちは、キューバ危機は核戦争にならなかったという結果を知っています。それだけに、ドキュメンタリー番組には、ひとつの重大な落とし穴が潜んでいます。事件を体験した人々が意図的に嘘をついていないにしろ、結果が分かっている歴史的出来事では、どうしてもそれを知ったうえで自分を正当化した説明をしがちなのです。結果を知っている“後知恵”で、あの時、自分は何を考え、どう決断したのか、とテレビのインタビューに答えてしまいがちです。

これから見るドキュメンタリー番組では、危機の日々の出来事をその瞬間、瞬間に記録していたテープに基づいて事実関係を構成しています。皆さんも、あの危機の日々の瞬間に身を置いて13日間の危機を同時進行で体験してほしいと思います。



渋谷教育学園中学校の6人の生徒さんと視聴するNHKの番組は、ワシントン支局が1998年に制作した『決定の瞬間〜記録されていたキューバ危機〜』です。当時、NHKワシントン支局長だった手嶋龍一がキャスターを務めています。ただ、今回の講義録では、1時間に及ぶドキュメンタリーをそのまま記録することはかないませんので、キューバ危機の事実関係を骨子だけを記しておきたいと思います。


キューバ核ミサイル危機:事実関係その1

1962年10月16日、キューバ上空を飛行したアメリカのU2型偵察機がミサイル発射基地を探知。CIA(アメリカ中央情報局)が分析した結果、カストロが1959年に革命を起こしたキューバにソ連が核弾頭を搭載可能なミサイルを持ち込んでいることが発覚。ケネディ大統領は、主要閣僚や外交・安全保障の専門家からなるEXCOM(緊急執行委員会)を招集して、未曽有の危機に臨むことになりました。
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編集=石井節子 撮影=曽川拓哉

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