ロシアを非難しない 非同盟アフリカ各国の論理

ロンドンでの取材で質問に答えるムセベニ大統領


──あなたはヨーロッパからの投資を呼びかけるためここにきた。最近ベトナムも訪問したと思うが、ヨーロッパとアジアで投資への姿勢の違いはあるか(香港メディア)

1900年代にアフリカ全体は植民地化されていた。有色人種国家であるアジア諸国は、中国、インドネシア、インドなど、反植民地闘争で共に戦い、共に活動をしていた。中国でさえも、第二の植民地のようにされ、以前は「我々と同じ植民地だ」と言いあっていたほど植民地化されていた。だから一緒に戦った人たちは、闘争の中で互いに支え合っている。ただ1対1での協力だけでは、あまりうまくいかないものだ。

私たちは西側諸国を敵視しているわけではない。ご存知のように、私たちはアメリカの黒人たちともつながりを持っているし、もちろん白人たちともつながりを持っている。前に述べたように人類の自由のために戦う私たちを支援した白人たちもいる。

しかし、彼らとアジア諸国との違いは、彼らはビジネスにも脅威を与えようとしてくることだ。アジア諸国は政治とビジネスを結び付けようとはしない。これは事実だ。ビジネスと政治を混ぜようとする西側の人たちは、自分たちが何を言っているのか分かっていない。彼らは傲慢さに満ちている。彼らが自分自身を落ち着かせる必要があるのではないだろうか。


ムセベニ大統領取材前の様子


ウガンダは、3月の国連によるロシアへの非難決議でも、10月のウクライナ4州の一方的な併合を無効とする決議でも「棄権」を貫いた。

その間7月には、ロシアのラブロフ外相のアフリカ訪問の目的地の一つとなり、ムセベニ大統領も会談をした。ラブロフ外相は「ロシアはアフリカに石油を提供する準備もある」と語ったという。また2023年に関係強化に向けて「ロシア・アフリカ首脳会議」を4年ぶりに開催する方針も示した。

一方で12月にワシントンDCで開かれたアメリカ・アフリカ首脳会議ではムセベニ大統領はバイデン大統領と会談。バイデン大統領は民主主義や人権の重要性を改めて強調したうえで、アフリカ各国の実利に繋がるように今後3年で550億ドルの支援を約束した。

西側につかないアフリカに感謝を述べつつ、自陣営に引き込もうとするロシア。西側につかずロシアへの制裁に参加しないアフリカが、抜け穴にならないようにと気を遣うアメリカ。そしてその裏に不気味にアフリカで影響力を増す中国の存在もある。西側陣営と東側陣営が綱引きをしている様相がここから分かるだろう。

ただムセベニ大統領の主張は一貫して「国益のために自分たちで考え自分たちで動く」「様々な理屈で他国に影響力を行使しようとする大国の論理を否定する」というものだった。これには過去の植民地時代の記憶も作用しているのだろう。

「もしも私たちのありのままの姿勢を必要としないのなら、それはあなたたち自身の問題だ。私たちが納得できない戦争に強制的に参加させられることはない」

この言葉が真であるならば、今後もアフリカが、少なくともウガンダが東西陣営のどちらかに極度に肩入れすることはありえないだろう。

【連載】ニュースの裏側 世界のニッチな現場から

文・写真=中村 航

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