ロシアを非難しない 非同盟アフリカ各国の論理

ロンドンでの取材で質問に答えるムセベニ大統領


指導者たちは、東西による二極化が間違っていると思っていた。そして現在、インドのように両陣営と良好な関係を築いている国もある。私たちは皆、東西両陣営との関係を望んでいるのだ。

両方との関係で言うと、人類は過去450万年の間、ここアフリカにいたのだから。私は「皆さんは全員アフリカ出身だ」と言いたい。10万年前まで、すべての人類はアフリカ人以外にはいなかった。つまりそこから、中国人になった人、白人になった人、他の何かになった人がいる。そんな中で私たちはアフリカに留まった。

この450万年で人間は2つの問題を抱えてきた。一つ目が自然によって人間が抑圧されることだ。つまり病気、干ばつ、洪水、などだ。これらは人類の問題である、なぜこれに集中して取り組まないのか分からない。人間は科学を通してより良い生活を送れるように、自然を手なずける良い方法を見出してきた。病気、飢餓、洪水、野生動物の制御は、以前は人々の問題だったが今では様相は変わってきた。

さて、人間の2つ目の問題は、仲間による抑圧。人間による人間の抑圧だった。なぜ、人間は仲間を抑圧するんだ?

すべての人間の質を向上させるために科学を使うことに集中しよう、と言っているのだ。そして、人間による人間の抑圧をすべて止めろ。それが私たちの主張で、非同盟運動の教義だ。しかし、ある人々は、自分たちが抑圧されずに、他の人を抑圧している限りにおいて、人々を抑圧するのが良いことだと考えている。

しかし、非同盟運動の指導者たちは、より良い人間の成長の仕方を知っている。なぜなら私たちは過去に苦しんだ人々で、闘争を通じて自由を獲得しなければならなかったものたちだからだ。人類のために、世界中のすべての人と協力したいと思っている。


2003年に東京で開催されたTICAD Ⅲで当時の小泉純一郎首相と会談したムセベニ大統領(Getty Images)

日本に対しても、あなたの祖父母たちがビルマ(現在のミャンマー)でイギリス軍と戦っていたときに、私たちの両親はイギリス軍に代わってビルマにもいた。日本人はアフリカ人が日本兵を食べるという噂に怯えたそうだが……(笑) アフリカ人は踊りが好きで、キャンプファイヤーの作り方を熟知している。そのため日本兵はアフリカ人兵士が火の前で踊っている音を聞くと「ああ、彼らはお互いを食べあっているんだ」と思ったそうだ。

1993年にTICAD(アフリカ開発会議)で呼ばれた時に、当時の日本の首相(細川護熙)と私たちの両親世代がいかにイギリスのために戦っていたかを話して、笑いあったことを覚えている。

何のために戦うのか? 残るのはただ虚しさだけだ。帝国主義の時に日本人はビルマで何をしていたのか? イギリス人はビルマで何をしていたのか? みなさん、自分の国はどうなんだ?

過去に悪い出来事が確かにあった。しかし、それでも私たちは現在日本人ととても仲が良い。他国との関係はそういうことだ。私があなたを食べることはない。心配しないでいいよ。
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文・写真=中村 航

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