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2022.12.25 09:00

コロナ禍でも「ガチ中華」の出店が加速化した5つの理由


ワールドワイドな現象「ガチ中華」


「ガチ中華」の波及は、ワールドワイドな現象であることも特徴だ。なぜなら、中国から多くの人たちが世界各地に留学やビジネスで渡ったことで、それらの人たちが、それぞれの国で中国系オーナーが提供する「ガチ中華」の安定した顧客となったからだ。

中国には、歴史的に大きく4つの大量出国期があるとされる。第1期は8世紀~9世紀で、唐時代末の黄巣の乱の混乱によるもの。第2期は16世紀後半で、明の時代の海禁政策の解除で東南アジアに多くの商人が渡った。第3期は19世紀で、イギリス植民地の拡大にともない中国南部の人たちが大量に労働者として国を離れた。

そして第4期が1980年代の中国の改革開放政策にともなう「新華僑」の出国時期から始まり、コロナ禍前の2010年代までにあたる。とりわけ21世紀以降に出国した人たちには豊かな時代に生れた高学歴の若い世代が多い。彼らは底辺労働者ではなく、高度なビジネス人材であり、「ガチ中華」を求める顧客としても優良だった。これが第3期との大きな違いといえる。

筆者が代表を務める東京ディープチャイナ研究会は、SNSでつながるゆるいコミュニティなので、メンバーのなかには海外在住の人たちもいる。彼らから届く情報によると、北米や東南アジアの国々でも、日本同様にこれまで存在しなかった「ガチ中華」を出す店が増えているという。これらの海外に渡った中国の人たちは、出身が中国全土に及ぶため、第3期のように中国南部の料理だけでなく、さまざまな地方料理が現れているのだ。

なぜ彼らは東京をめざすのか


では、なぜ日本の「ガチ中華」は、首都である東京に大量に出現したのだろうか。その数をすべて把握することはできないが、当研究会の調べでは「ガチ中華」集中エリアの池袋や上野、高田馬場などだけでも200店以上ある。また都心から郊外に延びるJRや私鉄沿線駅にも数多く点在しており、神奈川や千葉、埼玉方面なども加えれば、首都圏で400店~500店はあると考えられる。


高田馬場の四川料理店「孫二娘翹脚牛肉」の奇抜な内装。正面の女性キャラは水滸伝に出てくる悪女(孫二娘)を現代化した「国潮」イラスト

これらのエリアに「ガチ中華」の店が多いということは、それを支える中国系の人たちがたくさん存在するということでもある。では、多くの中国系の人たちが東京を目指す心性とは何なのであろうか。

彼らが出国するいちばんの理由は、身もふたもない言い方になるが、自国では叶いそうもない「発財」を新天地で実現することだろう。「発財」とは財産を築くこと。中国各地から来日する人たちには地方出身者も多く、なるべく首都に住みたいという思いもあるのだろう。

また「発財」するなら、日本最大の商都である「東京」と考えるのが自然だろう。首都圏は中国系の人たちの人口も多いので、同胞とのネットワークも築きやすく、ビジネスチャンスも増える。
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文=中村正人 写真=東京ディープチャイナ研究会

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