なぜかベトナム人の若者たちが集まる大阪・今里の韓国風「ガチ中華」

「紫金城(しきんじょう)」

大阪市生野区には鶴橋や今里などのコリアンタウンがあり、市内でも外国人居住者が多いエリアだ。市内に住む外国人のうち、2割弱が生野区に住んでいるという。

その今里に「紫金城(しきんじょう)」という韓国中華(韓国式中華料理)と中国東北料理を出す店がある。筆者が「海外現地化系」と呼ぶ「ガチ中華」のジャンルのひとつで、中国生まれの料理がいったん海外に伝播し、その後各国で現地化したご当地中華のことだ。

厳密に言うと「ガチ中華」ではないかもしれないが、いわば中国料理の変異種であり、こうした料理も日本国内で体験できる時代になっている。

人気は韓国で現地化した炸醤麺


近鉄大阪線の今里駅から歩いて5~6分ほどの通りに「紫金城」はある。店内に入ると、同店の壁にはメニューとなる料理写真がぎっしりと貼られていて、料理名は中国語と韓国語で併記されている。その数は約200種類あるという。

この店の人気料理はチャジャンミョンだ。韓国式ジャージャー麺のことで、韓国の国民食といわれる。韓国ではフライドチキンと並んでデリバリーでいちばんの人気料理だそうだ。


チャジャンミョンには日本の食文化の影響もあり、たくあんとタマネギの付け合わせが決まり

韓国のドラマや映画にもよく登場し、毎年4月14日の「ブラックデー」には、恋人がいない若者たちが黒服で集まり、チャジャンミョンを食べるというイベントもあるらしい。

チャジャンミョンは、もともと中国山東省由来の炸醤麺(ジャージャンミエン)が韓国で現地化し、ご当地麺となったものだ。だから、中国と韓国の炸醤麺は見た目も味も全然違う。

中国から炸醤麺が韓国に伝わったのは20世紀初頭で、最初は仁川の中華街で食べられていたが、朝鮮戦争が起こり、1950年代以降、中国系の人たちの多くが韓国を離れたことで、代わって韓国の調理人が中華料理店で鍋をふるようになった。そのとき、春醤(チュンジャン)という黒くて甘いミソを使うようになり、1970年代頃から韓国人好みのチャジャンミョンに変わったという。


こちらは中国の炸醤麺。ミソはしょっぱい

もうひとつ、この店の人気メニューは韓国式酢豚の「タンスゥユッ(糖醋里脊)」だ。日本の酢豚と違い、豚の天ぷらに甘酢ソースをかけたり、つけたりするもの。どちらかというと中国東北地方でよく食べられている中国式酢豚の「鍋包肉(グオパオロウ)」に近い。


この店のタンスゥユッには甘酢ケチャップのタレが付く
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文・写真=中村正人

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