この気づきを書く癖をつけておくと、言葉にする力、コメント力があがります。
極端に言えば、気づきを書けなくても、「なぜ、この情報をメモしようと思ったんだろう?」と自問自答するだけで、メモしたことへの意味づけを考えるトレーニングになるはずです。
こういったことが、普段の発言力の違いになっていきます。
会議で意見を求められても、気の利いたことが言えないと悩む人もいるでしょう。
そういった人は何も考えていないというより、どのように言葉にしていいのかわからないのではないかと思います。
たとえば「非正規労働者の賃金格差がなかなか是正されない」という話があったとして、自分の考えを聞かれたら「ヤバいですよね」といった、全く意味のない言葉しか出てこないこともあるかもしれません。
ところが普段から外部の情報に対して、自分の考えや感じたことを気づきとして言葉にする習慣をつけていると、少しずつ表現力が養われていきます。
「私は非正規の自由度の高い働き方が好きですが、自分の能力をしっかりPRしないといけないと思いました」とか「企業の利益を守りつつ、公平に評価する方法を考えるべきですね」といった、「私はこう思います」というコメントができるようになるわけです。
森保監督も普段から気づいたこともメモしているから、選手の心に響く一言が言えるのではないでしょうか。
皆さんも、小さなノートを持ち歩き、これは面白いと思った気づきをメモする習慣を身につけて、発言力や考える力を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
下地寛也(しもじ・かんや)◎コクヨ ワークスタイルコンサルタント、エスケイブレイン代表。コクヨがフリーアドレスを導入したことをきっかけに「働き方とオフィスのあり方」を提案する業務に従事し、ワークスタイルを調査、研究する面白さに取りつかれる。以来、働く人の創造性と生産性を向上させるスキルやマインドの研究を続け、最新刊『考える人のメモの技術 手を動かして答えを出す「万能の問題解決術」』(2022年9月、ダイヤモンド社刊)を含め10冊の著書を刊行。常にメモを取りながら、自由で豊かな働き方を実践するためのアウトプットを続けている。コクヨにおいても多くのプロジェクトマネジメント業務に従事。エスケイブレイン代表としてはビジネススキルに関するセミナーや講演、YouTube動画配信などの活動を積極的に行っている。