ビジネス

2022.12.24 10:00

日本の農業はどうなる? 八百屋「旬八青果店」が育てる希望の芽 

(左から)「アグリゲート」代表の左今克憲さん、「陽と人」代表の小林味愛さん


小林:私たちは物流においても、コストを削減する工夫をしていて。例えば、箱に入れると箱代も箱詰め作業の人件費もかかるので、収穫した際に入れるコンテナのまま出荷。輸送は福島から東京に行くトラックの相乗り便を使っています。
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10tトラックの隙間の例えば1t〜3t分を使わせてもらう。おかげで輸送費は、通常の宅配サービスの10分の1以下のコストに抑えられています。そうした物流コストの削減も相まって、通常の桃よりお手頃価格で提供できる。旬八さんのように直接お客さんに届けてくれる人たちがいるおかげです。

左今:規格から外れた桃を届けるにしても、今まで廃棄されてゼロ円だったものが売れるんだからいいじゃんっていう単純な話ではなくて。出荷作業の人件費や輸送費はかかるので、陽と人さんのように農家さんとコミュニケーションを取りながら、広く届けてくれる地域商社さんの存在は大きいんですよ。


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左今:「規格外」と呼ばれる青果に付加価値をつけて流通させると、供給量が増えて正規品が売れなくなって、全体の価格が落ちることを懸念する人も業界にはいるんですが、僕はそんなことはないと思っています。

むしろ、果物を全然食べてなかった人、もしくは食べたいけど高いから少ししか食べられなかった人たちに広がる裾野の方が広いはずで、結果的に農家さんや流通関係者の収入につながるはずだから。特に果物は、価格が上がって手が伸びにくく、食卓に並びにくくなっています。子どものおやつが気軽に買えるスナック菓子に代替されているのなら、少しでも価格を落として、毎日のように食べてもらえるようになったほうがいい。

小林:まさにまさに。新しい規格の果物ももっと高く売ったほうがいいという声もあるんですが、野菜と違って、果物って高ければ手が出にくく、毎日食卓になくてもいいものじゃないですか。子どもの頃に食べる習慣がなければ、大人になっても食べない。だから、お手頃価格で個性のある福島の美味しい桃を届けて、どんな家庭でも気軽に買えて旬の季節になったら食卓に並ぶようにしたいんです。

なんでも揃うスーパーと、旬の青果が並ぶ八百屋の違い


──たしかに、果物は嗜好品にもなりつつありますよね。毎日の食卓を担う家庭の家計としては、数十円、数百円の価格の差も大きいですし。その点、青果物がスーパーか八百屋か、買う場所によって値段が違うのはどうしてなんでしょう?

左今:値段は基本的に収穫量の供給と消費量の需要のバランスで決まっていくんですが、スーパーは、折込チラシやPOPを用意する関係で、販売の二週間前から市場と交渉して仕入れる数と価格を決めます。二週間後の収穫量が多くても少なくても、提供する数も価格も変わらず、差分は市場が持つ。

一方、八百屋は基本、そのとき市場にあるものを仕入れるスタンスです。キャベツが大量に採れたらその分、量を仕入れて安く売る。交渉しつつ、その日の市場の量や価格と連動するかたちで、販売価格を決めていきます。


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文=徳 瑠里香

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