その構造的な課題を解決するために、アグリゲートでは、都内のオフィス街に店舗を構える「旬八青果店」を起点に、仕入れから物流、弁当や調味料などの製造、販売まで、少なくとも情報は一貫して取りに行き、やれる範囲で内製化しています。
※SPF=Specialty store retailer of private label food
産地から自ら仕入れ、ITを駆使して情報管理をしながら、物流コストを削減した「適正価格」で、「新鮮」なうちに店頭に並べて、自分たちの手でお客さんに販売する。店頭に立って、つくり手の物語を届け、お客さんの声を聞き、産地に伝える。旬八青果店は、生産者と消費者を媒介する「メディア」としての機能も担っています。
──地方に行った際、道の駅とかで不揃いだけど新鮮な野菜が破格で売っていると嬉しくてついたくさん買っちゃうんですが、安く買えるのは物流コスト含めそうした間を通っていないから、ということなんですね。
左今:地元の特売所では、「規格」を通さず産地直送の青果が売られています。不揃いで傷があるものもあって、価格も均一ではなく、それぞれの適正価格がつけられていますよね。
不揃いで個性のある青果を「新しい規格」で消費者のもとに届ける
──たしかに、都市部のスーパーには形の整った綺麗な野菜や果物がすべて同じ価格で売られていて、地方の産地直送売り場とは景色が違います。出荷団体の「規格」を通っているものが並べられているのだと思いますが、そもそも農産物における「規格」とは、どういうものなのでしょう?
小林:野菜や果物は、農家さんが手を加えながらも自然の中で育つものなので、天候に左右され、虫に食われてしまうものもあれば、大きく実らないものもあります。なんでもかんでも出荷OKにすると、例えば桃だと梅くらいの大きさのものとか、虫が入っているものも混ざってきちゃうんですよ。そこで、この基準を満たしていれば出荷できるという品質保証として「規格」があります。
大きさ、重さ、形、色、熟度などをチェックして等級分けしていくんですが、見た目重視の日本の規格に合わない青果は、「規格外」として廃棄されたり、ジュースやジャムなどの加工品用に信じられないほど安く買い取られている現状があって。農家さんにとってはつくる手間は同じなのにほとんどお金にはならないわけです。
味はちゃんと美味しいのに、色や形に個性があるからと言って消費者に届けられないのはもったいない。私たち陽と人は福島県国見町を拠点に、独自の「新たな規格」と流通網をつくって、都市部を中心に青果店などに卸しています。