ビジネス

2022.12.24 10:00

日本の農業はどうなる? 八百屋「旬八青果店」が育てる希望の芽 




小林:国見町も農家さんの平均年齢が70歳を超えて年々体力的な限界で生産効率が下がっているし、今後担い手が減っていく可能性があって。この先10年弱ですよね、勝負は。農業がおもしろくて難しいのは、農家さんの生活がその土地に紐づいていること。家族の生活も仕事も、その土地に紐づいていて、農家さんにとっては人生そのものって感じだから、畑を簡単に誰かに譲ったり貸したりはできないんですね。

私含め、地域に入っていく人間はそのことを理解して、地域の人としっかりコミュニケーションをとって信頼関係を築いていかないといけない。

左今:地域側も新しい取り組みや変化を受け入れて、双方歩み寄ってやっていくしかないですよね。

──農業分野に参入しなくても、いち消費者としてできることはあるのでしょうか?

小林:野菜でも果物でも、化粧品でもなんでも、その背景にはつくっている人たちがいるんですよね。離れた場所にいると、なかなかつくり手の顔は見えないし、ずっと“当たり前”にあるものだと思ってしまうのは仕方ないと思います。

でも、それぞれ原材料や流通などに課題があって、いつかつくれなくなる日が来るかもしれない。常に市場は買う人たちに紐づいていて、農業だって誰もが無関係ではない。ちょっと気にかけてくれるとか、想いを馳せてくれるとか、メッセージをくれるとか、小さなことでもいいので少しでも関心を持って反応してもらえると嬉しいなと。今あるものが当たり前に続くわけではない、という意識を一人ひとりが持っていれば、農業の未来は変わっていくのかなと思います。


左今克憲(さこん・よしのり)◎アグリゲート代表。1982年生まれ、福岡県出身。青山学院大学理工学部に入学したものの、在学中のバイク旅で見た田畑の風景に、日本の食農への危機感を感じ2年で退学。2005年に東京農工大学農学部環境資源科学科に編入し、2007年に卒業したのちは、インテリジェンスに入社。2009年にアグリゲートを設立し、様々な食農分野の仕事を行い、見聞を広めた。2010年にアグリゲートを創業し、2013年10月に「旬八青果店」の1号店をオープン。現在6店舗を運営。

小林味愛(こばやし・みあい)◎陽と人代表。1987年東京都立川市生まれ。2010年慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、衆議院調査局入局、経済産業省へ出向。2014年に退職し、日本総合研究所へ入社。全国各地で地域活性化事業に携わる。2017年8月、福島県国見町にて陽と人を設立。子育てをしながら、福島県と東京都の2拠点居住生活を送る。


※この記事は、2022年11月にリリースされた「柿の木便り」からの転載です。

文=徳 瑠里香

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