ビジネス

2022.12.24

日本の農業はどうなる? 八百屋「旬八青果店」が育てる希望の芽 

(左から)「アグリゲート」代表の左今克憲さん、「陽と人」代表の小林味愛さん


──私はよく近所の八百屋を利用しているんですが、「今日はキャベツが安いよ〜!」とか「今日はパクチーないんだ」とか、なんでも揃っているというよりは、旬の安いものは安く、ないものはない。でもスーパーに行くと、八百屋になかったものがあったりする。この違いは、仕入れ方にあるんですね。

左今:はい。スーパーは、取り扱っている品数も多く、旬にとらわれず通年さまざまな種類が揃っています。

僕らのような青果店は、種類は少なめで、季節の旬の青果を中心に販売しています。今は品種改良が進んでいて、季節を選ばずに多くの作物が育てられるようになってきていますが、新しい品種の作物にとってもこの時期が一番育てやすい・おいしくなりやすい、という時期があります。その時期は供給量が当然増えるので、価格も相対的に安くなる傾向にありますし、無理してつくられてない分、栄養価も連動して高いことが多いと思います。

僕らが考える「旬」は、手頃で栄養価が高くて、農家さんも多くの手をかけずに育つもの。そういった条件が揃う旬のものを取り扱っています。



いつか食べられなくなる日が来るかもしれない。つくり手に思いを馳せる


──地方の農家で後継者がおらず、祖父母や親の世代で途絶えてしまうケースは私の身近にもあります。主語が大きな質問にはなりますが、農家の高齢化が進む中、今後の農業の未来はどうなると考えていますか?

左今:もともと学生時代、福岡から東京へバイク旅をしていたとき、地方の畑や田んぼに若い人たちがいないことを目にし、漠然とこれからの農業に危機感を抱いたことが起業のきっかけでした。

今思えば無知ゆえの発想だったんですが、そこに東京で食べた料理が美味しくないと感じた経験がリンクし、地方の農業と都市の食をつなぐ事業をやっていく決意をしたんです。2010年に起業したので、それから10年以上。まだその危機感は持っていますが、希望の芽はちゃんと育っている。家族経営の小さな農家さんは減っていくと思いますが、陽と人さんのように、地域の農家さんとタッグを組んだり、自ら栽培したり、ビジネスとして売り上げを伸ばしている法人は増えています。

僕らも過去、茨城県に自社農場を持って、機械メーカーと生産の効率化がどれほどできるのかを実験していました。今は、仕入と販売に集中したいため生産からは一時的に撤退していますが、その時の知見が全国各地の農家さんとのコミュニケーションで役立っています。

また、同時に、自分たちの実践から得た知見を伝える「旬八大学」を開講し、農業の未来を担う人材育成も行っています。今後、若い世代の中から、オペレーションを効率化してコストを削減し利益を上げながら、地域に根付いていける「人」がどれだけ出てくるかが勝負だと思っています。地域を大事にしながらビジネスの観点を持った「人」が今後の農業を支える重要な鍵になる、と。国見町の果物は小林さんがいるから大丈夫だと思えるので。
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文=徳 瑠里香

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