ニコンが画像の不正使用を防ぐデジカメ開発中、アドビと共同開発の来歴記録機能

アドビによるCAIの活動について現在地を紹介するメディアセミナーが開催され、ニコンの井上雅彦氏がデジタルカメラの取り組みを語った

AI(人工知能)を活用するデジタル画像処理技術が高度化するほど、オンラインでディープフェイクを悪用する事例も多発している。近年はNFTアートにも多くの関心が集まるが、デジタル作品の「盗用」によるトラブルもまた絶えないようだ。

Adobe(アドビ)が音頭を取って2019年に設立した「コンテンツ認証イニシアチブ(CAI)」は、デジタルクリエーションのフェイク情報に関わる社会問題を解決する活動だ。先頃、ニコンがカメラメーカーとして初めてCAIに加わった。さらにニコンでは、CAIが作成したデジタルコンテンツの透明性を担保するための規格「C2PA」を、デジタル画像データのキャプチャーデバイスであるデジタルカメラに組み込むシステムを開発中だ。

アドビとニコンが日本国内のメディアを集めてグループセミナーを開催した。ニコン映像事業部UX企画部参事の井上雅彦氏は「近年、プロフェッショナルからSNSを活用する一般の方々にまで、画像の改ざんや不正使用による悪影響が広がっている。デジタルカメラのメーカーであるニコンも、聞こえてくるこの課題に対処する責任を感じていた」と語る。同社は2021年にCAIとC2PAに賛同し、フェイク情報に対抗する取り組みを強化した。

アドビが10月に開催されたイベント「Adobe MAX 2022」にも、ニコンはC2PA規格に準拠するコンテンツ解析システムのコンセプトを参考出展した。今回はメディアセミナーの場で、ニコンとアドビによるソリューション連携が披露された格好だ。

フォトショップでの加工時にコンテンツクレデンシャルを付与する


アドビの「Adobe Photoshop」は世界中で多くのクリエイターに活用されているデジタル画像編集アプリケーションだ。アドビのクリエイター向けツールには、約3億2千万の画像素材を提供するクラウドサービスである「Adobe Stock」もある。現在、それぞれの最新バージョンにC2PAの規格をサポートする「コンテンツクレデンシャル機能」がベータ版として提供されている。


Adobe Photoshopにベータ版としてコンテンツ認証情報を追加する機能が加わった

例えばPhotoshopでファイルを加工する際にこの機能をオンにすると、ユーザーが画像にエフェクトを付けたり、サイズをトリミングした来歴がファイルに記録される。来歴記録は画像ファイルのメタデータ領域に暗号化されたかたち刻まれるが、文字列のみの小サイズなデータであることから、ニコンの担当者によると画像ファイルの総容量を肥大させるものではないという。Adobe Stockの素材にはあらかじめコンテンツクレデンシャル機能が埋め込まれていると解釈すればいい。
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編集=安井克至

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