また300カ所以上のロケ場所を探し、撮影における要望を聞いて、粘り強く調整を進めるとともに、約30日間の宮城県内のロケにも帯同した。その際、自分たちがPRしたい観光地などは提示せず、ドラマ制作の裏方であるNHK制作部の更なる裏方に徹した。
元来は残業嫌いの小野寺だったが、登米市にとって残業代以上に大きなリターンのある仕事だと考え、愚直に業務をこなした。「できません」と「わかりません」は絶対に言わないように努めた。プレッシャーを感じ、夢でうなされることもあったという。
スタッフに会えたことが財産
小野寺は黙々と仕事を進めるなかで思うことがあった。「自分がやり取りしていたNHK制作部の仕事は、地域における自治体職員の役割に似ている」と感じていた。「俳優やディレクターが良い映像を撮るため愚直に仕事を進めていることに、同志ともいえるリスペクトを覚えていた」。
そして、実はこの小野寺の思いは一方通行ではなかった。ドラマ放送終了後にNHK制作部のスタッフから「これまでで最高の担当者。全国で誰にも負けない自治体職員だと思う」と感謝されたという。最大級の賛辞に小野寺は涙した。
小野寺は「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2022」にも選出された
小野寺は、地方自治体の職員として「おかえりモネ」の制作を支えたことを「有名な役者さんに会えたこと以上に、素敵なスタッフとの出会いが財産である」と振り返る。
まちの魅力を伝えるシティプロモーションという一見華やかに見える部署であっても、小野寺のように愚直に黒子的な役割を貫くことで成果を導く公務員も存在しているのである。
連載:公務員イノベーター列伝
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