「米国の平均年収は9千万円」 名門校学生の回答に教員あぜん

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米国の名門大学群「アイビーリーグ」に入るペンシルベニア大学ウォートン校経営大学院のニナ・ストローミンジャー助教(法学・経営倫理学)は、自身が教える学生たちに対し、平均的な米労働者の年収はいくらだと思うかを尋ねた。

結果、25%が10万ドル(約1150万円)以上と回答。中には80万ドル(約9200万円)と答えた学生もおり、ストローミンジャーは驚いた。実際の平均年収は4万5000ドル(約520万円)とされる。

ウォートン校は今年、米誌USニュース&ワールド・リポートの米ビジネススクールランキングで2位に入った。授業料は年間約8万ドル(約920万円)。これに対し、同校があるウェストフィラデルフィアの住民の平均年収は約3万4579ドル(約400万円)だ。

ストローミンジャーは、学生の予想が現実から大きくかけ離れていた理由について、「人はこうした推測が非常に苦手で、貧富の差が現実よりも小さいと思ってしまう」と分析。また、自分自身の収入を基準に他者の収入を推測してしまうことも一因かもしれないとしている。

リットホルツ・ウェルス・マネジメント(Ritholtz Wealth Management)の会長兼最高投資責任者で、ブルームバーグのコラムニストを務めるバリー・リットホルツは、ストローミンジャーの数字に間違いがあるとツイートしている。

「ウォートン校の教員が収入の中央値を16.7%間違えているなら、学生の推測に何を期待できるだろう?」

中央値とは、一連の数値を大小の順に並べた際、中央にくる値を指す。一方で平均は、一連の数値を合計し、数値の数で割ったものだ。平均は、優れた測定基準とは言えない。

例えば、ビル・ゲイツとマーク・ザッカーバーグ、イーロン・マスクと私が同じ部屋にいて、全員の保有資産額の平均を出せば、私は億万長者ということになるが、それは事実ではない。

難関校であるウォートンに入学した聡明(そうめい)な学生が、平均的な米国人とその収入について理解していないというのはいささか驚きで、不安に駆られる。興味深いことに、米中西部の公立校であるオハイオ大学で経営学を専攻する学生は、同様の質問に対してはるかに正確な答えを出した。
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編集=遠藤宗生

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