世界のハイエンド層を魅了する「スポーツホスピタリティ」とは

バドミントン元日本代表選手・フライシュマン・ヒラード・ジャパン シニアコンサルタントの池田信太郎(左)、ラグビー元日本代表選手・HiRAKU代表取締役の廣瀬俊朗(中央)、Urban Cabin Institute パートナー山田理絵(右)


山田:ほかに、スポーツホスピタリティを発展させる際の課題は?

池田:人々が高揚できるようなホスピタリティースペースとして、会場をどれだけ魅力的にできるか。サッカーは観客席との間に陸上のトラックがあって臨場感が生まれないとか、アクセスが悪いとか、ロジ回りが悪いとか……。周りに観光産業がないのもよくないですね。

愛知県の新体育館、北海道の日本ハムのスタジアムなどは宿泊施設を伴った今までにないようなボールパークになったり、少しずつ進んではいます。

廣瀬:その場にしかないもの、例えば選手のジャージが飾られているロッカールームとか、熱が感じられるようなものもすごく喜ばれるんじゃないかな。

山田:試合前のミーティングに入り込んだりしたいですね。

廣瀬:いいです。そういうゲストのニーズに合わせた解説サービスも、これから僕たちがやっていくべきことだと思います。ラグビーもスクラムを見たい人、レフリーに注目したい人、司令塔目線が知りたい人、玄人かにわかファンかでそれぞれ聞きたいことが違うはず。子供のためにお金払ってプロに解説してもらいたい親もいるだろうし、スポーツの見方をまだまだ伝えられていないのがもったいない。



池田:国内消費だけでは限界があるので、海外のハイエンド層をいかに引っ張ってくるかもとても重要。Jリーグの川崎フロンターレに所属するチャナティップ・ソングラシン選手は、海外でも非常に有名で、日本を観光しながら彼を見たい人は多い。選手と会って話ができたり、日本の食文化や、ネットをたたいても出てこない日本を体験できるようなものを横串でどんどん考えていかないといけないですね。

山田:まさに。ハイエンドブランディングも富裕層の関心の高い分野を横串で繋げ、面で展開することで価値を高める手法です。前後の楽しみ方を、世界を旅した感覚と柔軟な発想で提案すれば、さらなる可能性があると感じます。

廣瀬:楽しみ方は人それぞれで、その人に応じた楽しみ方を僕らが用意することで、みんなが潤ってハッピーになれるのが理想ですね。バリアフリーやユニバーサルの観点でも、車椅子の人、目が見えない人、耳が聞こえない人が楽しめるサービスも日本はまだ遅れています。

僕は最近ビーガンの味噌汁セットをスタジアムで売っています。スタジアムフードにはジャンキーなものが多くて、健康志向の人にフレンドリーでない。そこで玄米とお味噌汁のセットを​​リーグワンの試合会場で販売したら、日本らしいとすごく反応が良くて。

加えてフードロスのことを考えるきっかけを作ろうと、市場では売れない具材をスタメンでない「ベンチ野菜」って名付けたんです。



山田:いいですねぇ、ベンチ野菜!

池田:それもある意味ハイエンド。社会の課題も含めたアプローチも、スポーツならではの役割です。そういうストーリーって、お金を払って買えないものじゃないですか。

山田:社会貢献は、ハイエンド層へのホスピタリティにとても重要な要素。成功した方々は妬みの対象にもなりがちなので、社会に好影響を与える行動をすごく意識しています。そこに廣瀬さんの取り組みはマッチしますし、ネーミングもスポーツらしい。こういう小粋で寄り添った一言が、すごく豊かさに繋がりますね。

廣瀬さんが中学時代からずっとキャプテンを務め、チームをまとめる上で考えたことは?
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文=山田理絵

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