スタンフォード大から見た日本はここが残念、作るべきは「失敗容認法」だ

スタンフォード大学アメリカンフットボール部コーチ、河田剛氏。コーチ業の傍ら、シリコンバレーで日米双方のスタートアップのサポート/アドバイザーを務める

我々アメリカンフットボールコーチは、言わば季節労働者である。前回もお話したように、シーズンは9月から11月末の3カ月、8月の1カ月はキャンプなので、繁忙期は4カ月程度である。その4カ月の間オフの日はほとんどない。

前回もお伝えしたが、シーズン中でも活動時間が限られるルールの中、短い時間で効果的に戦略や戦術を選手に伝えるためには、我々コーチングスタッフが用意するプレゼンテーションや映像資料が、大きなキーとなるわけだ。週によっては、家に帰れない日が続く時もある。

Good in, good out.


前置きが長くなったが、その強烈な繁閑の荒波を乗り切るために、我々には夏に1カ月のバケーションが与えられる。もう16年目のルーティーンとなったが、この1カ月は愛する母国に帰国して必ずやることが幾つかある。

1.美味しくて質の高い、そして安い日本の食べ物を食べる(コンビニスイーツ含む)

2.大好きな友人達や、お世話になっている、なるだろう人達に会う

3.日本や、その将来のためになることをする。

4.母校城西大学や、スポーツビジネス関連の学部を持つ学校での講師

5.アメリカンフットボールのアドバイザーとしての活動

1.は、ほぼ「食う・寝る・遊ぶ」なのでプライベートな時間である。5.は、自分の好きなことのマネタイズである。おこがましいことを言うようだが、3.、4.と2.の半分は、日本とその将来のためにやっている。年に何度か帰国する私であるが、私のフィロソフィーの一つである「Good in, good out. 自分が得た良いものや経験は必ず誰かにシェアする」はこの1カ月に凝縮されている。

「プレステ」の生みの親と会った!


今回はこの夏に経験した、一つの嬉しいエピソードを皆様にシェアしたい。バケーションも終わりに差し掛かった7月の後半、幼稚な表現で恐縮だが、一人の有名人との会食を持つ機会に恵まれた。久夛良木健さん、Ken Kutaragi、英語で検索してもそれが誰であるかすぐにわかるような人である。20代前半の若者のためにあえて簡潔に説明をすると、PlayStationを創った人である。メディアで見るよりも若く、肌艶の良い顔とその風体は実際の身長よりも大きく見え、なによりも活気に満ちていた。まるで、身体全体が「まだまだやることいっぱいある!」と表現しているようだった。

念のために言っておくが、これは久夛良木さんの年齢の話をしているわけではなく、プレステという、世界の誰もが知っているような事業を中心となって興してもなお、やるべきことは幾らでもあるという貪欲さが、その存在から感じ取れたと言いたいのだ。
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文=河田剛 編集=石井節子

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