ライフスタイル

2022.11.12 13:00

「なぜ生理はタブー視されるのか」 映画監督・朴基浩、ナプキンを装着して生活も


——映画を撮る前に、アンケート調査を行い、ナプキンを装着して生活をしたそうですね。

:生理の映画を撮ろうと決めてから、SNSを通じて生理にまつわるアンケートを募集したら、100人を超える女性から回答をもらって。ものすごくバラエティに富んだエピソードが溢れていたんです。一人ひとりこんなに違うんだ、一般化できない事象だなと感じました。男性の自分は生理を身をもって経験できないんですが、疑似体験してみたいと、一週間ナプキンをつけて生活してみたんです。初めはナプキンに水を垂らして、ドロッと感を出すためにシャンプーとリンスをかけてみたけどいい香りがしちゃって(笑)、最終的にはトマトジュースに行き着きました。

——トマトジュースをこぼしたナプキンをつけて生活してみて、どうでした?

:一週間の平均的な経血量を調べて、取り替えてはこぼす生活をしていたんですが、手間もかかるし、会議中とか、漏れないかな、臭わないかな、と心配になった。ここにPMSや生理痛など精神的・身体的な不調が伴うのは、大変だなって。なのになんで社会は「ないもの」として扱うんだろうってやっぱり思いましたね。

その後、性教育の普及に取り組むNPO法人PILCONの染矢さんが女性たちを集めてくれて、そこでリアルな声を聞いたらアンケートと同感覚の言葉が紡がれていて、本格的に撮影を始めた感じです。

生理がタブー視される背景には「男性優位の社会」があるという気づき


——映画を拝見して、私は女性ですが、感覚がわかる部分もわからない部分もあって、やっぱり生理は人それぞれ個別的なものであるし、女性同士でもあまり語り合ってこなかったなと思います。オープンにそれぞれの生理を語る女性の言葉も印象的ですが、この映画は男性である朴さんが、生理がタブー視される背景には「男性優位の社会」があることに気づいていく、男性としての当事者のドキュメンタリーでもありますよね。

:まさに、撮影を進めて女性に話を聞くたびに、どんどん自分の「男性性」を否定して、自己嫌悪に陥っていきました。これまでお付き合いしてきた女性や現在のパートナーとの関係性を振り返って、PMSだったのに逆ギレしちゃってたかもとか、性行為で無理をさせてなかったかとか。特に取材させてもらったセックスワーカーの方の「半分家政婦、半分風俗嬢」という言葉にはガツンと頭を殴られたような感覚でしたね。

言葉は強いけど、家事をやってもらって性行為を求めて、少なからず思い当たる節があるんじゃないか、と。認めたくはないけれど「男性性」を狡猾に利用している自分に気づいて、自己否定しました。


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文=徳 瑠里香

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