ビジネス

2022.10.06

シリコンバレーの動画スタートアップが本格上陸 創業期から支える27歳の日本人

Firework Japan代表の瀧澤優作


──その後またピボットしていますね。

中国で誕生したTikTokが米国にも上陸し、成長していくなかで太刀打ちできない、と気づきました。とはいえ、「動画は絶対にヒットする」というVincentとJerryの考えは揺らがず、FireworkのビジネスモデルをB to CからB to B to Cに転換しました。企業のアプリやECサイト上に簡単に縦型ショート動画を組み込めて、ライブコマースにも対応できるシステムです。

このアイデアを米国内のECサイト運営企業に伝えると、「今すぐ欲しい」という声をあちこちからいただくようになりました。

──自社サイトにFirework動画を埋め込むメリットは?

自分たちでファーストパーティデータや再生されたコンテンツの分析を元に、自社起点でリーチやマーケティング戦略をコントロールできる点です。既存のSNSなどをマーケティングのプラットフォームとして活用するのは簡単ですが、いつ利用規約が改変されるか、アカウントを停止されるかわからないという課題がありました。また、データはすべてプラットフォーマーが持っている状況なので、実のあるマーケティング活動につながりにくい。

自社サイトであれば、どんな属性の人が閲覧しているのかなど、すべてのデータにアクセスできます。そのデータに基づいてコンテンツもコントロールできる。5年後、10年後のビジネスを考えたときに、(データ的に)クローズドな巨大SNSに乗り続けるよりは良いよね、という話なんです。

ECサイトに人のぬくもりを


──5月には、シリーズBとしてソフトバンク・ビジョン・ファンド2からの総額190億円を調達しました。自社の強みをどのようにとらえていますか。

これまでのECサイトは、自動販売機のような顧客体験しか与えられませんでした。購入前に見られるのは写真や値段など販売者側からの一方通行の情報だけで、対面で購入するときのように販売員との双方向のコミュニケーションはありません。

そこで、ライブコマースによるインタラクティブなやり取りを入れることによって、ECサイトに人のぬくもりを与えられる、というのが強みです。



こうした世界観に孫正義さんも「いいね」と共感してくださり、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2より出資をいただきました。我々としても、ソフトバンクグループのさまざまなサービスと、ゆくゆくは連携できるかもしれないと期待しています。

──日本へは2年前に上陸し、この夏に本格的に進出されました。その指揮をとる立場として、今後の展望を聞かせてください。

Fireworkが誕生して3年が経ち、グローバルでは1000社、日本でもすでに100社ほどが導入してくれています。

コロナ禍で、誰もが時間や場所を問わずに購買体験ができるようになったからこそ、自社の商品を「選んで、買ってもらう」ことはとても難しくなっています。だからこそ、ブランドが直接顧客とコミュニケーションを取って、お客さまに納得して買ってもらえるような仕組みを広げていきたいと思っています。

文=渡辺まりか 編集=田中友梨 撮影=小田光二

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