代表を務める篠原祐太は、幼少期から昆虫食が身近にあり、昆虫の味を通じて自然の美しさに感動を覚えてきたという。ただ、周囲の目を恐れて昆虫食をひた隠しにしていた時期もあった。
そんな逆境を乗り越えて開業したアントシカダで、篠原が伝えたいこととは何か。その思いに迫った。
毛虫を食べてみたら、桜餅のような味がした
──「虫好き」の原点は幼少期にあるのでしょうか。
僕は八王子市の高尾周辺で育ったのですが、小さいころから暇さえあれば山に行って、植物や虫をとったり、川で泳いで魚を捕まえたりしていました。もともと虫が特別好きだったというよりも、地球がとても好きだったんです。
小さい子は泥団子でも草でも、興味があれば何でも食べてみるじゃないですか。それと同じで、虫を食べることは、僕の中ではごく自然なことでした。見るのも、採るのも、食べるのも、そして飼うのも好きでした。
食べると、その生き物についての圧倒的な情報が得られるんです。感動したのは、桜の木に付いている毛虫を食べてみたとき。モンクロシャチホコという蛾の幼虫なのですが、すごく上品な桜餅の味がするんです。見た目は毒々しいのに味は上品でおいしくて、そのギャップに感動しました。
でも、よくよく考えてみると、この毛虫は桜の葉しか食べていないので、桜餅のような味になるのは必然なんです。それが分かったときは結構嬉しくて。僕はいろいろな生き物を食べてきたけれど、その生き物自身も同じように他の生き物を食べて生きている。
そういうことが回り回って自分も生かされているんだということが分かって、当時幼稚園くらいの子どもの心なりに、人生って幸せなものだなと思ったんです。
だから、僕にとって、食べるという行為は「その生き物のことが知りたい」という欲求を満たしてくれるもの。その面白さが、今も活動の一番大きな原動力になっています。