宇宙

2023.05.16

「パラレルワールド実在」の証拠ついに発見か

宇宙が誕生したときの条件から多くの結果が生じ得る。宇宙に存在する10^90(10の90乗)個の粒子が138億年のあいだに相互作用によって展開し、到達した結果が私たちの存在そのものを含む複雑な体験につながっている。充分な機会に恵まれれば、その過程は何度でも起こりうるもので、われわれの宇宙が体験しなかった経緯を含め、起こりうる結果がすべて存在する“無限のパラレルユニバース”が実在することになる。しかし、われわれが観測できるのは、われわれが住む宇宙だけだ。JAIME SALCIDO/ T

ただし、インフレーションはあらゆる場所で一度に終わるわけではない。インフレーションが終わらない場所では、さらに膨張を続けて、より広範な範囲にわたるもっと大きなビッグバンが発生する可能性がある。ひとたびインフレーションが始まると、止めることは事実上不可能で、どこかで必ずインフレーションが継続する。そして時が経つと、さらにビッグバンがいくつも起こる。そのどれもが他のビッグバンと干渉することはなく、それぞれ独立した無数の宇宙が誕生する。これがマルチバースだ。

null膨張をつづける時空でそれぞれ独立した宇宙がたくさん誕生すると予測できるが、インフレーションはあらゆる空間で一度に終わるのではなく、隔離され、独立した空間で膨張を続けている。それこそがマルチバースに通じる科学的誘因であり、ふたつの宇宙が相反しない理由だ。個々の宇宙内での量子の相互作用によって量子力学的に起こりうる結果をすべて実現するには、インフレーションによって誕生する宇宙がいくつあっても足りない。KAREN46 / FREEIMAGES

このふたつの説を検証し、パラレルユニバースにまつわる予測を制限する方法がないことが大きな問題だ。つまるところ、われわれが自分たちの宇宙だけに閉じこもっていたら、どうしてほかの宇宙に到達することができるだろう? われわれの宇宙には独自の物理法則があるが、その法則もこれまでずっと保持されてきた他の膨大な量の法則に合致している。

粒子はただ発生し、消滅し、変質するのではない。他の物質やエネルギーの量子と相互作用することによってのみ存在する。その相互作用の結果もまた同様の物理法則によって制御されている。

これまで行われてきたあらゆる実験と観察と観測の結果や記録をもってしても、われわれの孤立した宇宙を超える何かしらの存在なくしては説明できない相互作用は発見されていない。

null素粒子物理学の標準モデルは、四つの力のうち重力をのぞく三つの力と、発見されているあらゆる粒子と、その相互作用を説明できる。地球上に設置可能な衝突型加速器によって、さらなる粒子とその相互作用の発見が可能かどうかは議論の余地があるが、現在の標準モデルでは強度のCP違反が観測されていないなど、いまだ解明されていない謎も多い。現代物理教育プロジェクト/ 米国教育省/ 米国科学財団/ 米国ローレンス・バークレー国立研究所

もちろんそれは今週になってたくさんの記事が紙面を飾る前の話だ。パラレルユニバースが存在する証拠を科学者たちが南極で発見したことが報じられたからだ。もしそれが事実とすれば、画期的な発見であることは言うまでもない。われわれの現在の宇宙の理解は不十分であり、これまで考えられてきた以上に学ぶべきことや発見すべきことがたくさんあることを大々的に示唆する主張と言える。

どこかに他の宇宙が存在するだけでなく、その宇宙の物質やエネルギーが伝達されて、われわれの宇宙の物質やエネルギーと相互作用する。もしこの主張が正しいとすれば、これまでどんなに想像力をたくましくしても夢でしかなかったSFの世界が現実のものになるかもしれない。他の宇宙に行くことだってできるかもしれない。そこではこんなことが起きるかもしれない。

・自分の国にとどまるのではなく、海外で仕事をすることにした
・されるがままになるのをよしとせず、いじめに立ち向かった
・逃げられそうになった相手をつかまえて、夜ふけにキスした
・かつて愛する人と共に直面した、生死のかかった出来事が別の結末を迎えた

nullマルチバースのほかのポケット宇宙(泡宇宙)、あるいは理論物理学がつくりあげたどこか別の場所に、パラレルワールドが存在することを表現したイメージ図。パブリックドメイン
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翻訳=北綾子/S.K.Y.パブリッシング 編集=石井節子

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