アートと経済社会を考える。AIやテクノロジーが感じられない価値観とは?

齋藤潤一、若佐慎一(右)


最近ではClubhouseという音声SNSによって、新たな人との出会いが生まれ、そこから仕事に繋がったケースも多々あります。Clubhouseは、耳の可処分時間が多いアーティストにとっては相性が良く、手を動かしながら使用できるツールとして、今も制作中などにアーティストの友人たちと活用しています。

ネットやSNSによって、人や物事の境界線の在り方が変わって、価値の刷新がいろいろな所で見られることが、とても興味深いと感じています。

──僕はちょうどインターネットが普及し始めた高校生の頃に、アンディ・ウォーホルの作品と出会い、アーティストの持っている物語と、絵という情報から伝わるパワーとインパクトに感銘を受け、芸術の世界にはまっていきました。アートは情動だと思っているので、NFTにはそんなに興味がないのですが、デジタル化されたものさえも所有することが世界的に流行っている昨今の状況を、現代アーティストとしてどう見ていますか?

所有という概念が更新される点と、今まで無限に複製可能であったメディアアートに唯一性を付加できるという点が、今後の展開に大きな期待感を持つことができる主なポイントだと思っていて、NFTによって新しい場が生まれる始まりなんだろうなと思っています。

あとは、NFTが持っている性質を手段とした表現に、どんな可能性があるのかを考えるとワクワクします。

「経済と文化がシンクロしている」




──アートをデジタルで自分のものとして所有できるようになった一方で、デジタル化が進めば進むほど、凹凸や光の当たり具合でも変化がわかるアナログへの所有欲が逆に増えてくるのではないかと思います。アーティストにとってはいい時代になってきているのではないでしょうか?

そうですね。まさにリアリティの価値の再評価が起き、それに伴って所有欲が刺激される方も増えるかと思います。

物事は常に相対的であると考えているので、デジタルの表現が盛り上がると、その対にあるアナログ表現にも光が当たる。特に自分の表現は、「実感」をポイントとした表現が多くあるので、デジタル表現が盛り上がれば盛り上がる程に、デジタルでは体感できない価値を提案できると思っています。
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文=齋藤潤一

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