ビジネス

2022.08.04

NMB48と上新電機の挑戦|クレイ勇輝

photographs by Masahiro Miki

地域に根ざした「小さくても偉大」な企業、「スモール・ジャイアンツ」は日本中に数多く存在する。そうした企業は、いかにして地域に溶け込み、ときには地域を巻き込みながら、ムーブメントを起こしているのだろうか。この連載では、神奈川県逗子市に活動のルーツをもつ実業家のクレイ勇輝が全国各地の経営者やリーダーから話を聞きながら、地域に愛される企業の秘密を解き明かしていく。

第一回目にクレイが会いに行ったのは大阪市に本社を置く上新電機の代表取締役社長・金谷隆平さんと、同じく大阪市の難波を拠点に活動するアイドルグループ・NMB48の二代目キャプテン・小嶋花梨さん。経営者とアイドル。立場は違えども、「大阪の人から愛されたい」と思いながら活動をしているのは同じだ。地域の人々の心に響くために、どのようなことを考え、そして、どのような行動をとってきたのか、ふたりに尋ねた。


「華やかさ」を好む大阪の人々に向けて発信するということ


クレイ勇輝(以下、クレイ):まず前置きしておかなくてはならないのが、おふたりは知名度も高く、決して「スモール」ではないのですが、大阪市という一大都市に根付いた活動をしている方の代表として、今回はお話をお聞きしたいなと考えていました。僕自身が神奈川県出身で湘南を拠点に活動の幅を広げてきたのですが、まず金谷さんには、1950年の創業以来ずっと大阪に根を張り続けている理由や、地域との関わり方についていろいろ教えていただけるといいな、と。

金谷隆平(以下、金谷):たまたま発祥の地が大阪で、そこに本社を構え、拠点にし続けているというのが正直なところなんです。さらにいうと、関西圏にとどまらず全国を視野に入れて営業の幅を広げていきたいなと考えてもいて。ただ、まずは地域の方から愛されずして企業の成長はない、というのが信念で、どうしたら大阪の人に愛されるだろうというのは、常日頃から意識していることです。実は、今日ご一緒している小嶋さんとも、そうした地域の方々から愛されるための試行錯誤のなかで接点ができました。

金谷隆平 上新電機代表取締役社長。1956年大阪府出身。1979年に上新電機入社。社内でいくつもの役職を経験したほか、2018年からは大手家電流通協会会長や、全国家庭電気製品公正取引協議会副会長を経験した。2019年より現職。
金谷隆平 上新電機代表取締役社長。1956年大阪府出身。1979年に上新電機入社。社内でいくつもの役職を経験したほか、2018年からは大手家電流通協会会長や、全国家庭電気製品公正取引協議会副会長を経験した。2019年より現職。

クレイ:2020年から関西圏で放送されている上新電機のコマーシャルに、NMB48のメンバーが出演されていますね。

金谷:はい。実はこれは私にとっては大きな賭けでした。というのも、小嶋さんには申し訳ないのですが、それまでNMB48というグループ名こそ存じ上げていたものの、当社のコマーシャルに出演していただくまでは個々のお名前は把握していなかったんです。

クレイ:そうした状況のなかで、なぜオファーすることが決まったのですか。

金谷:若年層の方々にも当社を知っていただきたい、という課題があったからです。当社のお客さまを年代別に見ていくと、おおむね42歳から56歳の年代が一番多い層なんですね。もっと若い方にも当社に興味を持ってもらいたいとなったときに、ただ若者に人気のある方に出演してもらうだけでは足りなくて、関西地盤で、かつ、華やかさが必要だと思った。すると、会議で「NMB48なら、大阪が拠点で、若者に人気で、しかも歌って踊れて華がある!」という意見が出たんです。

これは私の持論ですが、会議において社長は議長役に徹するのが大切であって、社長の意見を通す場ではないんですね。そうすることで、会議は意見が活発に飛び交う場となり、社内の風通しが良くなる。だから、まずは社員の意見に耳を傾けてみることが大切なのです。そうした流れのなかで、NMB48の方に出演していただこう、という決定に至ったのです。
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photographs by Masahiro Miki | edit by Yasumasa Akashi

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