ビジネス

2022.07.29

後発スポーツメーカー「On」が全世界で支持される理由

CFO兼Co-CEOのマーティン・ホフマン氏とCo-CEOのマーク・マウラー氏


他にも、発売間もない「クラウドイージー」のように、サステナブルな素材を使いつつ、使用する素材のバリエーション自体を減らすといった工夫を凝らしたモデルも打ち出している。

「こういった取り組みはコストメリットで考えることではありません。パフォーマンスをいかに高めるかを促進しつつ、それをどうやってサステナビリティと共存させるかを考えるのです。

我々は最終的に、化石燃料から脱却した循環型のモノづくりを目指しています。ファッションやフットウェアの分野で何をすべきかを考えた時、今はペットボトルをジャケットにリサイクルしているけれど、願わくばそのジャケットを、また別のジャケットに作り直せたら良い」

「そこで我々が行っているのが『クリーンクラウド』というプロジェクト。これは大気中に放出される前の炭素排出物を回収し、それを元に生成された素材でシューズのミッドソールを作るというものです。消費者のパフォーマンスを上げるのはもちろん、その中で環境負荷の改善に貢献してく。そういう『正しい』ことをしたいという想いから実践していることなんですよ」(マーク)

若年層へ向けた新たなアプローチも


テクノロジー、デザイン、サステナビリティという、ブランドが一貫してフォーカスする3つの要素。それぞれの本質とトレンドを巧みに捉えカタチにしていく姿勢から、Onが躍進を続ける理由が垣間見える。

最後に、ここ日本での今後の展開についてはどのようなビジョンを持っているのか聞いてみた。

「今回、On Tokyoに初めて訪れることができて、チームとしてやりたいことができている現状に改めて感心しています。新型コロナ前には18人だったスタッフが50人にまで増え、原宿に店舗を構えるまでになっている。リテールのパートナーともさまざまな施策を進めていることも確認できました。

新型コロナをきっかけに、日本でも多くの人が外に出て体を動かすことをはじめ、『動くということがいかに大事か』ということを感じたことでしょう。一旦そういう経験をすると、今世界が再始動しつつある中でも、その習慣を維持したいと思うのではないでしょうか。

Onはコロナ禍で特別なブームがあったわけではありませんが、一貫して成長を続けてこられたのは、ランニングがスポーツとして最も始めやすいというシンプルな要因もあると思います。今後もオンライン / オフライン問わず、信頼できるリテールのパートナーたちと共に販売チャンネルの拡充をはじめとしてさまざまな施策に取り組んでいきたいと思います」(マーティン)

「Onはランニングを原点とするブランドなので、これまでは専門店などに販売チャンネルが限られていました。そうなると、消費者の年齢層もやや上のほうに偏る傾向にあったと思います。



ただ実際は、クラウドノヴァやクラウドスイフト、クラウドXなど、明らかに若い人たちから支持されているモデルも出てきている。今後はより若い層を意識した施策も積極的に打ち出していきたいと思っています」(マーク)

すでにライフスタイルモデルを中心に取り扱いがスタートしているアトモスのほか、今年からはミタスニーカーズでの展開も開始している。成熟が進み、半ば飽和状態にある日本のスニーカー市場において、パフォーマンスブランドのOnがどのような存在感を示してくれるのか、注目だ。

文=外山壮一 写真=落合明人

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