Onは2010年、オリヴィエ・ベルンハルトとキャスパー・コペッティ、デビッド・アレマンがスイスのチューリヒで始めた。すぐれたクッション性をほこる自社開発のアウトソール技術「CloudTec(クラウドテック)」を用いたシューズは、発売されるやランナーの間でたちまち評判を呼び、2016年にはリオデジャネイロ五輪でのメダル獲得にも貢献した。
早い段階からスイス国外に進出したOnは、今では米ポートランドなど9カ所に事業所を構え、製品は60カ国あまりで販売されている。2019年には地元スイス出身の男子テニス界のレジェンド、ロジャー・フェデラーが共同起業家としてチームに加わった。ご多分に漏れず、Onもコロナ禍中のランニング人気やアウトドアブームも追い風になっており、アレマンによると年成長率は85%前後に達するという。
共同起業家として参加しているロジャー・フェデラー (c) On
ゴールドマン・サックスなどの主導で行われた今回のIPOも、一段の成長をめざすOnにとってはひとつの通過点にすぎない。アレマンは「大きなミッションを掲げている場合、その燃料となる資本にアクセスできたほうがいい」とし、上場は「ゴールではなく新たなスタートライン」だと気を引き締める。
マーク・マウラー共同最高経営責任者(CEO)は、Onは「スイスから飛び出してグローバルなムーブメントになった」との認識を示したうえで、引き続きイノベーションを起こしながら中国をはじめ世界でもっと多くの消費者の注目を集めるために、次の段階に進める用意もできていると話す。今後は自社の小売り販売網を拡大していきたいといい、イノベーションの面では素材やサステナビリティーへの投資も可能になるとしている。