その企業とは、スイス発のランニングシューズやアパレルを製造販売する「On(オン)」だ。
NPDによる調査によると、ナイキやアディダスなど名だたるシューズブランドがしのぎを削るランニングシューズ市場において、スイス、アメリカ、日本で成長率1位を獲得するなど、着実な成長を果たしている。
現在は世界50カ国で販売され、スイスはもちろんアメリカ、ドイツなどで着実にファンを獲得。日本も世界トップ5の売上を誇り、注力マーケットでもある。
Onの代表モデルである「Cloud」
ソフトな着地と爆発的な蹴り出しを実現するために開発を重ね、誕生した特許技術CloudTecを備えたランニングシューズは、いまや世界中のアスリートやセレブリティが愛用するブランドにまで成長。しかし、競合他社と比べるとまだまだ新興ブランドである。
そんなOnが、なぜ「テニス界の皇帝」であり世界的スーパースターであるロジャー・フェデラーをシニアチームメンバーとして迎えるに至ったのか。 On Japan代表である駒田博紀は、「同じスイス出身であること、そしてOnのビジョンに共感してもらったから」と話す。
「ある日、スイスの本社内が沸き立ったんです。『ロジャーがうちのシューズを履いているぞ!』って。当時ロジャーは他ブランドとも契約を結んでいたはずだし、なぜだろうと思いつつ、まだ若い企業なのですごく嬉しかった。ロジャーのことは社員みんなが大好きだったし、Onの共同創業者たちも早速ロジャーにコンタクトを取った。これがOnとロジャーが出会ったきっかけですね」
その後、フェデラーはかねてよりOnのシューズを愛用していたことが判明。本人と話をしているうちに、一流のアスリートでありながらビジネスパーソンであり、インベスターであり、リーダーシップを発揮する人物であることが分かってきた。
「シューズのデザインや機能だけでなく、Onのビジョンにも深く共感を示してくれたようです。どのタイミングかは定かではありませんが、自然に『一緒に働こう』という話になり、ロジャーのシニアチーム加入が実現しました。だから、よくあるスポンサー契約やサプライヤー契約とは違います」と駒田。