ところがその後、ドイツは2度の世界大戦敗北という時代の荒波に呑み込まれていく。せっかくこの町に芽吹き、花開いた時計産業であったが、ソ連占領地域となった社会主義国家 東ドイツの体制下には国営企業GUB(グラスヒュッテ時計企業)として統合されることで辛くも命を繋ぎ止める。
だがこの町の人々は、ソ連占領下においても自分たちが築き、受け継いできた時計づくりの伝統と誇りを守り続けた。そして1990年、東西ドイツの統一によって、GUBは民営化される。それは同時に、町の歴史そのものとも言えるウォッチメーカー、グラスヒュッテ・オリジナルの再出発の時でもあった。
2000年、グラスヒュッテ・オリジナルは世界最大の時計グループであるスウォッチグループの一員となる。激動の時代を経て脈々と受け継がれてきた時計づくりの情熱と手作業の伝統、そして革新技術を融合させる独自のマニュファクトリー体制のもと、いまでは全時計部品の95%を自社内で製造する世界トップの時計ブランドとして世界にその名を馳せる。
また、自社の歴史は町の歴史そのものであるという出自に敬意を払い、2008年にはかの伝統あるグラスヒュッテ ドイツ時計製造学校をリノベーションし、ドイツ時計博物館を開館。貴重な歴史的収蔵品を展示するだけでなく、技術者たちは展示品の修繕・修復にも取り組んでいる。その姿勢はまさに温故知新。時代を超えて受け継がれていく、新たな名作づくりのインスピレーションにも繋がっているという。
グラスヒュッテ・オリジナルを選ぶべき理由
時計選びは、なりたい自分選びでもある。メンズファッションあるいはホテルやレストランなどのサービス業の分野では「足元(=靴)を見れば、その人が分かる」といった箴言がよく知られているが、初対面の相手を前にして、人は靴だけでなく腕時計にも注目する。あなたはその時、その場所で、その人に腕時計を見られて、ドキッとしないでいられる自信があるだろうか?
ライフスタイルやファッションが多様化した時代に、腕時計を“あえて付ける”という選択をするのならば、TPOに合わせるだけでなく、その場で表現したい自分像についてもよく考える必要がある。スマートフォンはいつでもスマートフォンだが、腕時計は服装に合わせて付け替える必要がある。つまり、複数本をもつ必要があるということだ。
いま巷で腕時計投資の対象となっているアイテムの主流は、ジャンルで言えばステンレスケースにステンレスブレスレットを纏ったスポーツウォッチである。多くの人は、それをあたかも万能の1本であるかのように、ハレの場からケの場まで、スーツの時にもTシャツの時にも同じように使い回すが、それは間違いだ。
どんなに高級なものでも、スポーツウォッチはスポーツウォッチ。ジャケットスタイルまではいいとして、ここぞという場面でのスーツスタイルには、レザーベルトのドレスウォッチを身に着けるべきである。それも、腕時計は装身具でもあるのだから、レザーベルトの色は鞄や靴、ベルトなど他の革製品と合わせるのが望ましい。