転売利益のためではなく、「自分への投資」に選ぶべき本命時計とは?

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いまやスマートフォンを見れば時間を知ることができる時代。それでも腕時計がなくならないどころか、一部人気モデルが定価の数倍もの値段で取り引きされるような異様なブームが起きているのはなぜか。

腕時計には、それを身に着ける自分が「どんな人間か」を他人に表明するための、いわば社会的装身具としての側面もある。一時のブームに流されることなく、自らのアイデンティティに重ねて選ぶべき理由と、いま刮目すべきゲルマンウォッチという選択肢について論じてみたい。


“転売ヤー”が暗躍する昨今の“腕時計投資” ブーム


「ロレックスマラソン」という言葉を聞いたことがあるだろうか。お目当てのロレックスを求め、正規店を次から次へとリレーして回ることを指す言葉で、それをやる人のことは「ランナー」と呼ぶのだという。だが、自分が欲しくてやっているのであればいいが、そこに暗躍するのが転売目的の、いわゆる“転売ヤー”だというのだから、どこか釈然としない思いがある。

実際、ロレックスほど王道と呼ばわるにふさわしい時計はないだろう。「いつかは自分も……」と憧れたことのない人のほうが、むしろ珍しいのではないか。

その憧れを、何かの記念に、頑張った自分へのご褒美として手に入れるストーリーであれば共感できるところを、「欲しい、けれども“もの”がない」からといって、定価以上を払ってでも手に入れる──という経済力と実行力のある人たちが、昨今の“腕時計バブル”を引き起こしてしまったのだろうか。結果的に値はますますつり上がり、さらには“転売ヤー”のつけ入る隙をつくってしまったというわけだ。

ちなみに人気モデルの代表格「デイトナ」は、国内定価160万9300円のところが、2022年7月現在、ピーク時よりは下がったが、それでもおよそ450万円の実勢価格で取り引きされているという。それにしても、ネットを検索してみると「週刊ロレックス相場」や「腕時計投資新聞」なるデータサイトが次々とヒットする。まるで株投資の話のようだ。

趣味と実益を兼ねた腕時計投資が存在すること自体、決して否定するものではないが、“良いもの”とは適正価格も含めた価値観であるのだとすれば、本当に欲しい人が正価で手に入れにくいという現状には憂うべきものがあるのではないか。

さらに筆者にはこんな心理が働いてくる。「本当は好きでも、他の多くの人も欲しがっているもの、ブームとしてメディアに取り上げられているようなものであれば、状況が落ち着くまで待ちたい。その間に、他人と被らない、より個性を主張できる“自分だけのこだわりのもの”を別のところから探したい」と。
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文=大野重和

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