ルールづくりのあり方は国としての競争力を大きく左右する。日本政府でも、既存ルールがテクノロジーの進化に合わせてアップデートされていないことに危機感をもち、改革を進める動きが本格化している。そのキーマンが、デジタル副大臣と内閣府副大臣を兼務する小林史明だ。デジタル化と規制改革、行政改革に一体的に取り組むというチャレンジを、若きリーダーはどうけん引するのか。
──「テクノロジーの社会実装によりフェアで多様な社会を実現する」という政治信条を掲げています。既存の法規制やルールについてどのような問題意識をもっていますか。
小林史明(以下、小林):日本におけるデジタル施策やイノベーションの促進は、これまでのところ残念ながらうまくいっていません。その理由を総括すると、課題は大きく3つあります。
まず、技術の進展に対してまったく社会制度が追い付いていませんでした。政府として既存の法律を変えていこうという動き、つまり規制改革はこれまでもやってきて、私自身も10年取り組んできました。しかし、民間から「これ何とかしてくださいよ」と受けた要望を一つひとつ議論していくというやり方で、受け身でしたし、時間がかかり過ぎていました。
2つ目の課題は国と地方のガバナンス(の混乱)です。コロナ禍でも明らかになったように、地方に権限があることにより、本来、国が全国で統一的に実施した方が効率的なことが実施できなかったり、データの項目が自治体ごとに異なることで集約するのに苦労したりということがありました。
そして3つ目がリソースの問題です。問題意識が高まっても、政策を実現するために必要なリソースを準備できていませんでした。
──小林さんはデジタル庁設立に向けた党の提言の取りまとめも担当された経緯があります。デジタル庁によって規制改革の観点では何が変わるのでしょうか。
小林:デジタル庁の守備範囲として、いま話した2つ目と3つ目の課題をカバーするかたちになります。これまでと違うのは、他省庁に対してもデジタル化を推進する権限と、リソースをもつ組織が誕生したことです。
さらに岸田政権は、デジタル施策、規制改革、行政改革を1人の大臣のもと(現在は牧島かれん大臣)、一体で推進する体制をつくりました。私も副大臣としてこの3つを見ています。冒頭で挙げた3つの課題を網羅的に解決するための環境が整ったと考えています。