日本の入国規制が緩和され、やっと海外の方を迎えられるようになった5月末。日本を代表するミシュラン三つ星フレンチの一つ、「レフェルヴェソンス」にて、同じくカリフォルニアで三つ星を獲得している「シングル・スレッド」とのコラボディナーが開催された。
コロナ後初となる、国際的なシェフを招いてのコラボディナーということで高い注目が集まり、予約の抽選倍率はなんと60倍。
そんな予約困難な状況の中、幸運にも当選したカスタマーを驚かせたのは、穴子と出汁をメインディッシュに据えた特別なコース料理だった。今回は両レストランのシェフ、生江氏とカイル氏に、その料理を通して伝えたかった、“未来の食”へのメッセージについて聞いた。
「プラネタリー・バウンダリーという言葉をご存知ですか?」
生江氏はそう問うと、次のように続けた。「地球の限界を指し示す概念で、そこで定義された限界点を超えると、人々の生活が脅かされるとされてます。今回のコース料理は、それを強く意識したもの。島国を囲む海の恵みをプラントベースのメニューに取り込み、地球環境や社会、人々の健康にもやさしいメニューに仕上げました」
プラネタリー・バウンダリーは、9つの項目について、各々の限界点を示している。中でも、気候変動、生物多様性の喪失、生物地球化学的循環の3つについては、既に限界点を超えているという。だからこそ昨今、世界全体で地球の持続可能性についての議論や活動が活発化しているというわけだ。
プラネタリー・バウンダリーの図表。参照;環境省 令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書
9つの項目の中で、食に関わる項目は、生物地球化学的循環。これは窒素やリンの循環であり、主に食糧を作るために使用される肥料や家畜の排泄物などに含まれる。
窒素やリンが有効利用され、食料の生産性が向上し、安定的に食料を供給できるようになった一方で、土地の栄養がやせ細り、それら成分が海に流れ出すことで海洋汚染が広がり、地球の持続可能性が脅かされている。つまり“食”についてさまざまな改善を行わないと、地球が立ち行かなくなるということだ。では一体どのようなことに目を向ければ良いのだろうか。