確かに、コラボディナーを振り返っても、肉に関しては「そういえば出なかったね」ぐらいに感じる。むしろ、日本の食材や出汁、フレンチのテクニック、カリフォルニアの空気感が絶妙に織り交ぜられた素晴らしさが印象に残っている。
コースのメインディッシュは、穴子のおかゆと昆布の出汁。ディナー時はもちろん本記事のような説明は一切なく、一人ひとりの感性に委ねられる
生江氏とカイル氏は17年前、洞爺湖のウィンザーホテルにあったミシェル・ブラス トーヤ ジャポンというレストランで共に研鑽を積んだ。その後、イギリスのザ・ファット・ダッグでも同じ釜の飯を食ったという深い間柄だ。ただの元同僚ではなく、家族のような親密な絆があり、料理を通じて地球や社会全体、人々の心を良い方向へ導きたい、という想いも共有する。
プラネタリー・バウンダリーというシリアスなテーマを背景にしながらも、同志である2人が無邪気に、目一杯楽しみながら料理をしたという自由な創造性、磨き抜かれた技巧、魂を呼応させた地に足のついた料理たちは、未来の食のあり方や喜びを示唆するものだった。
そんな2人は、声を揃えてこう語りかける。
「“食べる”というのはユニバーサルなもので、すべての人が好意的な気持ちで迎え入れることができる行いです。だからこそ人は、“食”を通じてお互いを理解することができる。そして、感謝の念や互いを慈しむ気持ちを重ね合わせることで、より深く繋がることができます。レストランは、美味しい料理を通じて、人々に人生の喜びや美しいものへの共感を呼びかけ、人間同士が愛し合うという、優しく大きな循環を生み出すことができると信じています」
レフェルヴェソンス◎卓越した食事体験の提供はもとより、飲食業界におけるサステナビリティの未来をリードするフレンチレストラン。ミシュラン 三つ星、グリーンスター、ルレ・エ・シャトー2022 エシカルキュイジーヌトロフィーを獲得し、世界から高い評価を得ている。
シングル・スレッド◎レストランに農場を併設し、フードシステム全体の持続可能性や生物多様性の向上を志すミシュラン 三つ星レストラン。サステナビリティに関する取り組みを評価され、米国で初めて「グリーンスター」を授与。The World’s 50 Best Restaurantsにもランクインしている。
連載:クリエイティブなライフスタイルの「種」
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