LGBTQ+が感じる「違和感」 誰もが働きやすい職場とは?

(左から)サリー楓、松岡宗嗣


自分の職場にLGBTQ+はいない?


──現在の日本企業の取り組みをどのように見ていますか。

サリー:ナレッジはとても普及してきたと思います。それは2015年ごろからSNSの盛り上がりや報道の量が増えてきたことで、研修を導入する企業が増加したからです。ただ、多くの企業がアクションに移す段階に入るまでには、あと3年ぐらいかかりそうです。

その原因は2つ考えられます。ひとつは、当事者たちが要望を出してから、企業側が実践するまでにはどうしてもタイムラグが発生してしまうこと。



2つ目は、ナレッジとしてインプットした知識をリアルに身の回りで起きている現象として理解するまでには、「社会」による後押しが必要だということ。

様々な事例が発信されていくことで、「他の会社はこういうことしているんだ」「うちの会社も、LGBTQ+の方がいるかもしれないね」といったことを実感できるようになる。そうなると、「何かやらないといけない」と火が付きます。

松岡:自分が社会のなかでマジョリティという優位な立場にいることを疑わないまま、「多様性を受け入れる」という考えに至ってしまっている人も多いのではと思います。あくまでも「普通という枠からはみ出ている人を受け入れてあげる」、という意識なのかなと。

特に経営層の人は、そうした“わかった気”にならないように注意してほしいと思います。知人の社労士の方が、(経営者層は)「差別はダメだよね」とか「ジェンダー平等って大事だよね」とは言うけれど、「自分が差別をすることはない」と、加害している可能性や無意識の偏見については考えていない経営者も多いようです。

自分が加害してしまったことに対して批判を受けると、「そんなつもりはなかった」と言い訳してしまうという事例も発生しています。それは、自分の価値観やこれまで経験してきたことに対して、「疑う」ということをしていないからではないでしょうか。

人の考えは簡単に変わるものではないので、仕方のないことでもあります。だからこそ、経営陣など企業の意思決定を担う人たちの属性を多様化することが急務だと思います。

サリー:そうですね。

子どものカミングアウトに関しても、似たことが起きています。例えば、よその家の子どもがカミングアウトをしたという話を聞いたときは「LGBTQ+でしょ、知ってる」と難なく受け入れられる。ただ、いざ自分の子どもにカミングアウトされると、どうしても受け入れられなくて悩んでしまう人がいます。

「いつも一緒に仕事をしている同僚がカミングアウトをしたら」、といった当事者意識はまだないのかなと。なんとなく線引きがあるように感じます。

松岡:例えば前述の厚労省の調査では、多くの人が「LGBTQ+」といった言葉は知っている一方、「自分の職場には性的マイノリティはいない、わからない」と答えてる人が約7割もいます。

一方で、同性婚の賛否を問う世論調査を見ると、年代問わず賛成の方が多数派になってきている。それでも「自分に関係があること」とは思っていないのかもしれないですね。社会全体のことを考えた意見と、個人的な見解は違うからかもしれない。
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文=田中友梨 写真=小田光二

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