LGBTQ+が感じる「違和感」 誰もが働きやすい職場とは?

(左から)サリー楓、松岡宗嗣


推進のための「3つ」のポイント


──サリーさんは2019年に入社した日建設計で、少しずつ社内の環境を変えてこられました。経緯を教えていただけますか。

サリー:日建設計は海外15カ国に拠点を持っているグローバル企業なのですが、私が入社するまではLGBTQ+に関する取り組みはまったくありませんでした。

私は採用面接で、対面でお話できるタイミングでカミングアウトをしました。当時は人事担当者に「LGBTQ+? なんですかそれ?」といったような質問をされて。ただ、その後に「知識はないけれど、教えてください」とお願いされたんです。すごく素直なコミュニケーションでした。



その後の当社の動きには、3つのポイントがあります。ひとつ目は、現状に素直になること。「教えてください」という姿勢ですね。そして2つ目が、恐れずに対話すること。当事者・非当事者含めて、積極的にコミュニケーションをする場を設けてくれました。3つ目は、限られたアセットの中でもアクションに落とし込み、少しずつ前進していったこと。

要は私たちが普段ビジネスでやっていることと一緒です。社会課題を発見してステークホルダーと話し、当事者やそれを解決できる人たちと話し合って、用意できる資源をを使いながら解決していく、といったイメージです。

「お金がないから取り組めません」とか、「声が聞こえてこないから、声はなかったことにする」とか、「リスクがあるから、カスタマーコミュニケーションはしません」といったことは、ビジネスならありえないですよね。

松岡:企業活動の自然な循環のひとつですね。

──例えばどんなアクションを?

サリー:大きな動きだと、オールジェンダートイレですね。当社にはジェンダーレストイレがなくて、この3年間、私は会社の執務フロアのトイレを使ったことがありませんでした。毎回オフィスビルのセキュリティゲートの外側に出て、ビルに備え付けられた男女共用トイレをつかっています。

そのことは会社も把握していたんですが、予算の関係ですぐには取り組めず。最近、ついにトイレを改修することになり、担当者から「何に困ってるか具体的に教えて」と言われ、対話をする場をつくっていただきました。

結果的に、自分でデザインをさせていただくことになり、今製作中です。

「コミュニケーションの方法」を伝えたい


──今回創刊する『BE』は当事者の「声」を発信するための、ひとつの手段になりますね。どのようなことを期待しますか。

サリー:LGBTQ+の方と企業の担当者とが、コミュニケーションをとるための大きな一歩になってほしいですね。企業側も、当事者である従業員の声をちゃんとすくい上げるのはけっこう難しいんです。

また、LGBTQ+の取り組みは職種によって、改善ポイントが変わってきます。ロッカールームが問題になる場合もあれば、健康診断が問題になる場合もある。「こうすればいいよ」というチェックポイントを提示するよりも、「コミュニケーションの方法」を伝えたいですね。

松岡:『BE』は企業の担当者にお送りするのではなく、あえて街頭で配布します。幅広い方に読んでいただけるので、その点が強みなのかなと思います。

文=田中友梨 写真=小田光二

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