この数年で、「ダイバーシティ&インクルージョン」に取り組む企業は増加した。とりわけLGBTQ+に関しては、2020年にSOGIハラやアウティングの防止が「パワハラ防止法」に盛り込まれたこともあり、多くの企業がそれらの課題に目を向けるようになった。
ただ、課題を認識してはいるものの、有効なアクションに至っていない企業が多いのが実情だ。
そんな中Indeed Japanは、LGBTQ+当事者が就活時や職場で感じたことのある想いや違和感などの声を集め、それらをもとに、LGBTQ+当事者を取り巻く仕事や職場環境に関する状況や課題を知り、理解しようとする機会をつくることで、すべての人々が自分らしく働ける社会を実現していくことを目指すプロジェクト『Indeed Rainbow Voice 2022』をスタートした。6月の「プライド月間」に合わせて、集めた声をもとにしたライフマガジン『BE』も創刊する。
『BE』の編集スタッフにはLGBTQ+当事者で、日建設計NADコンサルタントのサリー楓、ライターの松岡宗嗣、元バレーボール選手の滝沢ななえ、YouTuberのかずえちゃんの4人が協力する。
今回は、サリーさん、松岡さんの2人が、『Indeed Rainbow Voice 2022』に集まった声を参考にしながら、職場における「ダイバーシティ&インクルージョン」の推進のヒントを探った。
気づいたら同じような人しか残ってない?
──今回の調査では、LGBTQ+の方々が職場で感じた違和感として、どのような「声」が挙がったのでしょうか。
松岡:多かったのは、「彼氏・彼女はいるの?」などと、異性愛を前提とした恋愛に関する話題を振られること。あとは、女性らしさや男性らしさを押し付けられるなど、ジェンダーロールに関すること。典型的な困りごとですね。
「企業としてダイバーシティを謳っていながら、ロッカーの鍵の色は男女で違うのか……」といった指摘もありました。
サリー:トランスジェンダーの当事者からは、制度面での課題が多く挙がっていました。懸念点は「トイレや更衣室などといった会社の設備や制度を自分の性自認に合わせて利用できるのかどうか」ですね。
“トランスジェンダー”とひと口に言ってもグラデーションなので、個別対応が必要になる場合もあり、会社が柔軟に動けるかどうか重要になります。「理解を深めるための社内研修はあったけれど、実際は上辺だけの取り組みになってしまっている」といった意見もけっこうありました。
あとは、匿名だからこそ出てきた意見として「過剰に配慮されても困る」という声もありましたね。気を遣われている感じがすると、逆に要望を出しにくいという感覚はわかります。
松岡:そうですね。何か特別なことを求めているのではなく、公平に扱ってほしいということですよね。ただ、当事者のあいだでも困難の度合いや認識は異なるので、企業の性的マイノリティに関する施策そのものをやめるべきだという意見には、注意も必要だと思います。