山田:色々な業界に波及し、地方創生にもなるところがスーパーヨット誘致の意義ですよね。
稲葉:はい、地域に直接お金が落ちることに加え、重要なのは、世界の超富裕層と呼ばれる方々が日本に来ることによって、日本がブランドになるということです。
山田:まさに。世界経済に影響力を持つ方々を「日本のファン」にすることが日本のブランド価値を高めると私も国に提言しています。
稲葉:スーパーヨットは高級車、プライベートジェットを持った人が次に所有したがるものです。富裕層のうち「ウルトラハイネットワース」と呼ばれる金融資産30億円以上の人の中でも、約2%しか所有していないんです。ただ、富裕層のネットワークから得る影響力は非常に大きい。日本のインバウンドを上げていくうえでも、トップダウンで攻めるのは効果的だと思います。
また、ほとんどのオーナーは日本に取引先があって、彼らを招いてパーティをします。スーパーヨットでゆったりと長い時間を一緒に過ごすことで、人間関係が構築でき、新しいビジネスの芽が生まれたりします。しかも彼らは自費で日本に来てくれる。これを誘致することが日本を良くしていくツールになるでしょう。
山田:チャーターも認可されれば、さらにユーザーも増えるでしょうね。国内のスーパーヨットオーナーの状況はいかがでしょう。
稲葉:昔から日本のオーナーは、海外でスーパーヨットを所有するケースが多いです。国内では経営者が所有することにネガティブなイメージがつきまといます。ただ昨今は状況が若干変わってきていて、若い方々やITで成功した方は大きい船を国内外で持ち始めています。
山田:スーパーヨット客の日本での過ごし方の一例を挙げていただけますか?
稲葉:2018年4月に大阪に入港した大富豪ファミリーは、最初は3週間の予定が最終的には8カ月も滞在して、12月までの間に計66カ所の港をめぐりました。歴史的な神社仏閣を訪ねたり、伝統芸能を見たり。奥様が大の和食付きで、日本にあるミシュランはほとんど行ったのではないでしょうか。翌年にもまた、2カ月間滞在しました。コロナ禍でなければ2020年には沖縄も訪れる予定でした。日本に来るスーパーヨットのオーナーはリピート率が高いです。
山田:買い物もされますか?
稲葉:お肉や海産物はいくらでも購入されます。牡蠣は喜ばれますし、寿司職人を船に呼んだり、ゲストだけのための打ち上げ花火をしたりもします。子供がいる方には、ディズニーランドやUSJ、チームラボも人気です。
山田:アート作品はどうでしょう?
稲葉:瀬戸内芸術祭を訪れたオーナーは、船に停泊しながら毎日テンダーボート(小型の船)で小豆島、直島、犬島を回っていました。船内にはアートが多く飾られていて、奥様や娘さんが主導していくという感じでした。