プレゼンの神様、澤円「ITエンジニア視点のクルマ観」を語る

圓窓代表取締役の澤円氏


ドアが上に開くクルマ


──ハリアー ハイブリッドの次に購入された車はなんですか?

4、5年前のことです。あるメディアの企画で、1週間スポーツカーを借りて、普段使いしながらその様子をSNSに上げる、という体験をさせていただいたんですが、そのときにお借りしたのがマクラーレン 570Sだったんですね。

ここでさっきの「憧れていた車」の話に繋がるわけですが、ずっと乗ってみたかった「ドアが上に開く車」を、ここでついに運転できたんです。それはもう強烈な体験でした。もちろん、あくまで取材用だったのでお返ししたのですが、そのあともずっと忘れられず。とはいえマンションが買えるような値段ですから、サラリーマンからすればただの夢だと思っていました。

570Sは、イギリスのマクラーレン・オートモーティブが2015年に発表したミッドシップ・スポーツカー。車名の570は同車の最高出力570psに由来する。独創的なデザインは、カーデザイナーのロバート・メルヴィルが担当。
570Sは、イギリスのマクラーレン・オートモーティブが2015年に発表したミッドシップ・スポーツカー。車名の570は同車の最高出力570psに由来する。独創的なデザインは、カーデザイナーのロバート・メルヴィルが担当。

ところがまたも偶然に、ふだん通っている美容院の近くにマクラーレンのディーラーがオープンしたんですよ。ちょうどその頃に独立の話も出てきていたので、「買えるかも」なんて思っちゃったんですね。副業である程度の収入もできているし、実際ローンを組んだら買えることが分かった。そのまま勢いで買ってしまったのが、マクラーレン570Sです。

マクラ─レン570Sを納車した際に撮影された記念写真。愛車と共に写るのは澤円さん(右)と、澤奈緒夫人(左)。(写真:本人提供)
マクラ─レン570Sを納車した際に撮影された記念写真。愛車と共に写るのは澤円さん(右)と、澤奈緒夫人(左)。(写真:本人提供)

上方に向かって開くドアは「ディヘドラルドア」と呼ばれる。マクラーレンが伝統的に採用している開閉方法で、スーパーカーの代名詞的存在だ。(写真:本人提供)
上方に向かって開くドアは「ディヘドラルドア」と呼ばれる。マクラーレンが伝統的に採用している開閉方法で、スーパーカーの代名詞的存在だ。(写真:本人提供)

──憧れのスーパーカーを納車された際は、どんなお気持ちでしたか?

普通なら、達成感や高揚感が少なからずあると思うのですが、僕はあまりそういう感覚がなく、むしろおっかなくてしょうがなかった。どこかにぶつけたらどうしようかと、ずっとビビりながら運転していました(笑)。それくらいがちょうどいいのかもしれませんが。

──社長がスーパーカーに乗っていると、ステータス性を求めていたり、車がモチベーションになっている場合が多そうだと思いがちですが、澤さんの場合は少し変わっていますよね。

僕はだいたい流れに身を任せるので、あまり自分にルールを決めてないんですよね。ただ、しかるべきタイミングで行動を起こすことは意識しています。

例えば、1995年に全世界でインターネットが普及し始めましたが、まだ全員がパソコンを買っているような時代ではありませんでした。そこで僕は、かなり無理をしてめちゃくちゃ高価なパソコンを買ったんですよ。家でネットサーフィンしまくりました。

そしてインターネットの基礎的な概念を理解して、「インターネットのことならあいつに聞けば分かる」という「タグ」がついたんです。

圓窓代表取締役の澤円氏

最近だとコロナ禍がそうですね。これは世界で同時にゲームリセットがかかった状態です。すべての人々が自由に移動できなくなり、まず僕がやろうと思ったのはオンラインに完全対応することでした。自宅の配信環境をめちゃくちゃ整えたんです。そうすると、自宅にいながらも価値を出せるようになる。

そして、世界的に自宅で仕事をすることに対する理解度が上がったところで、次は「所属」をしなくてもいいと思い、会社に所属することをやめました。これもゲームがリセットされたタイミングで動いた例です。

──実際に独立されて、いかがでしたか?

自由ですね。こんなに自由だったんだ、と。やはりサラリーマンをやっていると、向いていないことでもやらなきゃいけない瞬間があるんですよね。僕、書類仕事が大嫌いなんですけど、サラリーマンは書類によってはだれかに任せられないものがちょくちょくあるんですよね。

あと、場所の制約を受けないのは本当にありがたいですよね。どうしてもオフィスに行かなければならないような、移動が必要になる事態が激減しました。
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文=米永豪 写真=佐藤亮太

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