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2022.05.09 08:30

ネット取引やメタバースで増えるトラブル。「ODR」は紛争解決のイノベーションになるか

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ODR(Online Dispute Resolution)をご存知だろうか。

インターネットが普及し、気軽に物やサービスを購入できる時代。コロナ禍もあってインターネット取引は国内・越境を問わず活況だ。しかし、取引が増えれば、トラブルも増える。個人での対応には限界があるが、そのソリューションになり得るのがODRなのだという。そこで今回のコラムでは、ODRに造詣が深い、渡邊真由氏、増田雅史氏、羽深宏樹氏に話を伺った。

Online Dispute Resolution(オンライン紛争解決手続)とは


まず、ODR研究の第一人者である立教大学の渡邊真由氏に、ODR全般について伺った。

「ODR(Online Dispute Resolution)、文字通り、ITやAI技術を活用して紛争解決を実現しようとするもので、リーガルテックの一種です。これまで裁判や裁判外紛争解決手続(ADR)といえば、対面で行うのが当然でした。ただ、従来の手続きは、時間やコストがかかります。他にも心理的負担など様々なハードルがあり、解決をあきらめる人も多いです。

他方で、技術を活用してデザインを工夫すれば、紛争解決プロセスをより身近で便利なものに変えることもできます。例えば、法的情報の提供、トラブル状況の診断、当事者間の交渉、第三者を介した対話など、ODRであれば、トラブルの発生から解決までをシームレスにつなぐことが可能です。

法的サービスの利便性が高くなれば、利用してみようと思う人も増えるはずです。司法の空白地帯を防ぐことにもなり、紛争解決の体験を大きく変える可能性がある。そういう意味で、ODRは紛争解決におけるイノベーションになり得ると考えられています」

渡邊氏の写真
渡邊真由|立教大学法学部特任准教授・博士(経営法)、 ODRとその制度設計のあり方に関するDispute System Designが専門。法務省ODR推進検討会委員、日本ODR協会理事、マサチューセッツ大学NCTDRフェロー、スタンフォードロースクール元客員研究員他。

2000年前後から議論されていたODRだが、注目されるようになったのは最近とのこと。コロナ禍や技術の発展、SDGsに「正義(司法)へのアクセスをひらく」ことが掲げられていることもあって、ここ数年で急速に、世界各国で社会実装が進んでいるのだという。

渡邊氏に具体例を挙げていただくと、国際的な枠組みでは、UNCITRAL(国連国際商取引法委員会)やAPEC(アジア太平洋経済協力)が越境取引紛争におけるODRの利用を推奨しており、ISO規格に関する議論も進んでいるという。

また、国内でも、法務省のODRの推進に関する基本方針では、「スマホ等の身近なデバイスが1台あれば、いつでもどこでもだれでも紛争解決のための効果的な支援を受けることができる社会を実現する」という目標を掲げているとのこと。今後、この実現に向けて具体的なアクションが取られることになるだろう、と渡邊氏はいう。

ODRを導入し、顧客満足度向上に成功したeBay


では、実際にどのようなところでODRが導入されているのだろうか。渡邊氏は欧米の現場での例を挙げ、説明してくれた。

「ODRの運営主体には、主に司法型、行政型、民間型の3つがあります。他には、これらの団体に技術提供をするシステムプロバイダも主要なプレイヤーです。
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文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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