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2022.05.09 08:30

ネット取引やメタバースで増えるトラブル。「ODR」は紛争解決のイノベーションになるか

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ODRを導入することの合理性を担保するような外部環境の出現に期待


最近メタバースやWeb3、NFTが話題になることも多いが、今後トラブルは増えるのだろうか?この分野に詳しい弁護士の増田雅史氏にメタバースでのトラブル解決について伺った。
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「メタバースのように極めて自由度の高いサービスが浸透し、現に社会生活を実質的に送る人が増えれば、そこでの紛争の発生はもはや不回避なこと。ただし、サービス事業者の側で紛争解決の仕組みを実装するインセンティブが内発的に生じるわけではありません。そういったサービスがなければユーザーから見向きもされない、という状況となれば、企業が自発的に導入することになると考えられます。その方が経済合理性があるからであり、その好例がeBayのODRです。

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増田雅史|弁護士(日本・ニューヨーク州)森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士。IT・デジタル関連のあらゆる法的問題を一貫して手掛ける。ブロックチェーン推進協会アドバイザー、虎ノ門ヒルズインキュベーションセンター「ARCH」メンター、『NFTの教科書』編著者。

しかし、日本での実例は非常に少ないのが現状です。膨大なコストがかかるので、経済合理性のみに従えば、得られる効用が見合わないためだと考えられます。その結果、消費者・利用者の泣き寝入りが発生することになるのですが、その点は残念ながらそれほど重視されてきませんでした。
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では、ユーザーは泣き寝入りするしかないのかというと、そうではありません。例えば、ESG投資の文脈で紛争解決システムが実装されたサービスの事業者に対してより多くの投資を振り向ける傾向が強まるなど、ODRを導入することの合理性を担保するような外部環境の出現が、状況を変える可能性があります」

また、別の要素としては、効率的な外部サービスが利用できるかどうかも大きく影響するという。実装コストが低減すれば、導入の効用がこれを上回り得るからだ。現に、カスタマーサポート業務はさかんに外注されており、その延長として位置付ければ、普及が急速に進む可能性もあるという。その点で、企業が利用しやすいODR関連サービスプロバイダの登場は歓迎すべきこと、と増田氏はいう。

ODR以外の紛争解決方法はどうだろうか。増田氏は「多数の利用者を抱え、類型的に事故やトラブルが発生するサービスの場合、ブロックチェーン上での取引の自動実行の仕組みを活用するなどして紛争自体をかなり抑止できれば、そこから零れ落ちるトラブルはサービス全体でカバーして自動的に補償する、といった保険的な発想も合理的な選択かもしれません。」と語った。

実践に基づいてルールを更新する「アジャイル・ガバナンス」でのODRの位置付け


今後、日本ではどのようにODRの社会実装が進むのだろうか。政府が提唱する「アジャイル・ガバナンス」では、その実践プロセスの一つにODRがある。最後に、元経済産業省官僚で弁護士の羽深宏樹氏に伺った。

羽柴氏の写真
羽深宏樹|弁護士(日本・ニューヨーク州)東京大学公共政策大学院講師。前経済産業省ガバナンス戦略調整官。アジャイル・ガバナンスに関する研究および実装のアドバイスを行っている。2020年、世界経済フォーラム及びApoliticalによって、「公共部門を変革する世界の50人」に選出。

「私たちは今、極めて不確実性の高い時代を生きています。複雑で先の見えない社会では、事前に細かなルールを定めることがどんどん難しくなっていきます。ルールの段階では大まかな目標や原則を定め、それを具体的にどう実践していくかは、当事者の判断に委ねざるを得なくなっていくのです。
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文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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