こうやって物事を分析していく時の考え方の一つとして、“MECE”という概念があります。Mutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの略で、相互に排他的で、全体として包括的という意味。カンタンに言うと、重複なし、漏れなし、ということで、これが物事を考える時に大事だよ、という教えです。
コミュニケーション能力、洞察力、体力はそれぞれ独立していると言えます。他にも漏れがないか確認しながら、全てを網羅する大きな項目を作りましょう。
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「中項目」に分ける
でも、この三つだけだとまだ大きすぎて、漠然としていますよね。“コミュニケーション能力”と言われても、その枠が広すぎるせいで、どうやってその枠内に評価という名の具材を詰めていけばいいのか、迷ってしまいます。ですので、この大項目をさらに分けましょう。
例えば、話す能力、聞く能力、書く能力、読む能力などでしょうか。他にもあるかもしれません。あるいは、“話す能力”と“聞く能力”は連動しているものだから切り離して考えることは出来ず、“口頭コミュニケーション能力”という一つの項目に合体させてしまうのがいい、という主張もあるかもしれません。全く別の切り口から、関係を作る能力、関係を続ける能力、商談をまとめる能力みたいにしてもいいかもしれません。
さらに「小項目」に
この中項目も、もう少し細かくできそうです。
例えば“関係を作る能力”は、第一印象の良さ(表情、身だしなみ、声など)、(話題を作って)打ち解ける能力、(多くの人にリーチする)積極性といったように分けられるかもしれませんし、“関係を続ける能力”は、連絡を続けるマメさ、話した内容を記憶する能力などに分けられるかもしれません。
仮に、ここに5点満点で点数をつけていくと...
部員Aの“関係を作る能力”:第一印象の良さ 4点|打ち解ける能力 5点|積極性 3点
部員Bの“関係を作る能力”:第一印象の良さ 3点|打ち解ける能力 4点|積極性 5点
具体的になったおかげでイメージはしやすくなりました。でも、一体全体、結局どっちのほうが、総合としては優れているのでしょうか? よく分かりません。
〇〇しすぎると、分かりにくい
それぞれの項目が人と関係を作るためのキーとなる要素であるのに間違いはないと思うのですが、細かくしすぎてしまったことで、全体像が見えにくくなってしまう。悪い典型例だと思います。
漠然としすぎる項目だと評価する側が途方に暮れてしまうし、評価を読む側も具体的にどういう理由で高(低)評価なのか分からない。だからと言って細かく分断しすぎると、今度は全体像が見えにくい。この辺で、評価システムのデザイナーのセンスが問われる訳です。
なんでもそうですよね。五七五、という形態で“季語”を入れて作品を作りなさい、という枠(ルール)は絶妙なセンスです。170音以下ならなんでもOK、季語も別になくてもいいですよ、と言われるとわけが分からなくなってしまう。
手を使わずにボールをゴールに入れなさい、というルールも絶妙。頭や胸は使ってはいけません、足はいいですが必ず右足を使わなくてはいけません。その際、左足は地面に触れていないと反則です、などと言い出すと、自由度や芸術性が損なわれてしまう。
こういったバランスを考えて、項目を一つずつ作っていきます。
次回(7月29日公開)は、こうして作った“枠”の中で何をどうやって評価してもらいたいかを示す、各項目の定義付けについて、考えていきます。
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