「気分よく走れる」モチベUPだけじゃない、音楽のスゴイ効果

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イヤフォンやヘッドフォンで何かを聴きながら走る人の姿が、街中でもフィットネスクラブでも多く目に付く。

退屈しのぎに?音楽が好きだから?

理由はそれぞれだろうが、実は音楽を聴くと「気分よく走れるように感じる」のには根拠がある。感性の心理学の研究者である神戸学院大学心理学部の河瀬諭准教授に話を聞いた。

脳のしんどい感覚を和らげる


ジャンルの好き嫌いはあるにせよ、音楽を聴くのが嫌いと言う人はあまりいないように思う。好きな音楽を聴けば何となく気分がよくなるし、“ここぞ!”と気合いを入れなければいけないシーンには“この曲を聴く!”と決めている人も多いのではないだろうか。

河瀬氏はこのような音楽が人間に及ぼす影響、人の心理に与える変化にはどんなものがあるのか、なぜそのような心理変化が起こるのかについて、研究しているのだという。

「私自身、これまでにバンドを組んでいたこともあって、音楽、そしてグルーヴ(ノリのようなもの)とは一体何だろうと思っていました。音楽を聴くと人は心理的・身体的にどう変わるのか、演奏者同士はどのようにコミュニケーションを取るのか、演奏者の思いは聴いている人にどのように伝わるのかについて研究を始め、今に至るという感じです」

音楽の心理学的研究の分野では最近、体の動きと音楽との関係についての研究がトレンドになっているのだそう。そこで今回の疑問、つまり音楽を聴くとなぜ気分よく走れるように感じられるのかだが、心理学的にはどのような理由があるのだろうか。

「我々は運動しているとしんどくなってきますよね。“しんどいな”というのは、体や脳が感じる情報です。音楽を聴くと、そのしんどい感覚に音楽が割って入るというイメージで、音楽がそれを誤魔化してくれるというと言いすぎかも知れませんが、運動は嫌だなといった感情も含めて、ネガティブな感覚を和らげてくれる。心理学的にはそう説明できます」


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キツイ運動にはあまり効果なし


以前、河瀬氏が出演したTV番組では、これを「脳からのSOSを音楽が掻き消してくれるから」と説明されていた。まさに脳が“もう疲れた、もう走れない”などとネガティブな感情に支配されているところに音楽が流れてくると、それを忘れることができ、走っていることがきつく感じられなくなるということになるのだ。

「元々のネガティブな情報が少なくなる、和らげられるということなので、ものすごくキツイ運動をして、体がものすごくしんどい状態だと、そもそも音楽が割って入る余地がなくなってしまいます。そうなると、音楽の効果はあまり期待できないんです。ですから、強度的にはそんなに強くないジョギングやウォーキングなど、目一杯やるような運動ではない方が、音楽の疲れを和らげる効果はあると言われています」
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文=定家励子(パラサポWEB)

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