海外では「NBA Top Shot」の登場以来、一足先に活況を呈しているが、一方でNFT自体、初期のブームから本来の価値を見極める時期を迎えているという見方もある。
日本のスポーツNFT参入企業は、どのように取り組みを始め、何を目指しているのか?
今回、いち早くスポーツにブロックチェーン技術を導入したWeb3企業、フィナンシェ共同創業者・取締役COOの田中隆一氏に話を聞いた。
──スポーツNFT事業に参入した経緯や、現在提供しているコンテンツ、サービスについて教えてください。
フィナンシェでは、NFT事業に先立ってトークン発行型クラウドファンディング「FiNANCiE」を展開しており、国内プロチーム初となったJリーグの湘南ベルマーレをはじめ、これまで150以上のグループ、個人、プロジェクトのトークンを発行してきました。
実は我々は2017年頃からブロックチェーンに取り組んでいますが、その間新型コロナの影響もあって、スポーツ界は3つの大きな課題に直面しました。
既存のサポーターに試合の中止や入場制限でなかなか観戦体験を提供できなかったことと、新しいファンを獲得するチャンスが限られたこと。そして、収益減です。
トークンを使えば、新たな収益を作り出し、トークンホルダー向けにグッズのデザインを決める投票企画なども開催でき、さらに投資に興味がある人たちを新たなファンとして発掘できる。
我々の技術や仕組みとスポーツ界の課題がフィットして、クラブトークン、そしてNFT事業を始めました。
日本においては、NFTを出したからすぐに収益になるかというと、まだ難しいと思うんです。認知度は少しずつ広がってきているものの、収益的なインパクトを残せる市場感になっていません。
ですので、我々としては先ず、クラブトークンとNFTを連動して発行するところから始めています。具体的には、クラブトークンを保有している方に記念のNFTを提供したり、トークンを新たに販売する際の特典としてNFTをつける、といった活用法です。
──昨年6月、リアル「キャプテン翼」として知られる南葛SCがクラブトークンを発行し、NFTのコレクションカードを特典にしていましたね。総額4200万円分のクラブトークンが購入されて話題になりました。
NFTの南葛SCコレクションカード *完成イメージ(フィナンシェ プレスリリースより)
魅力のあるコンテンツづくりが重要です。
中でも、選手個人の発行するNFTは大きな可能性を秘めていると思います。
例えば冨安健洋選手は、現在イングランドの名門アーセナルでプレーしていますが、もしJ2アビスパ福岡時代に彼のNFTが発行されていたら、きっとすごく価値が上がっていたと思うんです。
選手個人のNFTにはクリアしなければいけない問題が色々ありますが、そういった世界観を見越して、先に動くことに意味があると考えています。
冨安健洋選手(Photo by David Price/Arsenal FC via Getty Images)