「枠」は定義が重要
前回、評価の項目は大きさのバランスを考えながら、作っていかなくてはいけない、という点についてお伝えしました。
例えば、営業部員の“コミュニケーション能力”という大項目の中に、中項目として“関係を作る能力”があり、それをさらに“第一印象の良さ”、“打ち解ける能力” ...などと小項目を作っていく話です。
その小項目に、5段階の点数をつける、といったルールを作る場合、そこには「第一印象は良ければ良いほどいい」という、評価枠のデザインをした人の主観が存在します。
基本的にはその通りでしょう。でももしかしたら、ちょっとぶっきらぼうで第一印象が悪いけど、いざ話してみるとより多くの人が打ち解ける、という人がいるかもしれない。そういう人は点数は低くなってしまうわけですから、評価デザイナーの主観の押しつけが、奥の深い評価を奪ってしまうことになりかねません。
でもやっぱり、“関係を作る能力”という中項目だけだと漠然としすぎますよね...。どうしたらいいでしょう?
ここで大事になるのが、各項目の定義です。この枠の中では、何をどうやって評価してもらいたいか、というある程度のガイダンスを設けます。例えば、こういう感じでしょうか。
「顔の表情や身だしなみ、声の質といった第一印象や、会話を通じて人と打ち解ける能力、それを多くの人と行う積極性なども考慮に入れながら、新しく関係性を作っていく能力について、総合的に判断して評価すること」
こうしておけば、一応の目安は示しつつも、最終的には評価者一人一人の裁量に任せる、というかたちを保てます。どんな狙いでこの評価枠が作られたのか、という意志は伝えながら、それをどう評価すべきか、という押し付けにはなりません。
この各項目の定義は当然、しっかりとしたものでなくてはいけません。ちょっとしたことで揺らいだり、境界線があいまいだったりすると、枠とは言えません。
“肩の強さ”の定義をあらためて考えてみると...
野球を例に出すと、野手の守備を評価する項目の一つに“肩の強さ”があります。この項目の定義は、野球を知る人には自明だと思いませんか? 特に説明をつけなくてもいい気がします。
でもこれ、実際に僕の経験で「何を以て肩の強さというのか?」と議論になったことがありました。野球に詳しい方は、どういう解釈の違いだったか、読み進める前に考えてみてください。