ピザづくりと人材評価、奥深い共通のコツとは?

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評価を静かに支配するのは「枠」である


僕は大学時代、映画監督になりたくて、視覚芸術を専攻していました。その一環で取った写真の授業で、名物のおじいちゃん教授がことあるごとに言っていたことがあります。

「写真はフレーミング、枠取りが大事だ」と。ある被写体に対してカメラを構える時に、上側の辺にはどこまでを入れて、どこからを外すのか。下側は? 右は、左は? それを考えるのが肝要、というのが彼の持論でした。

ある日彼はクラスに、地元の名店のピザ職人のインタビュー記事の切り抜きを持ってきました。その中で職人は言うのです。

「美味しいピザを作るために重要なのは生地であり、しっかりとした生地を作るためには“端”の部分が大事なのだ。あの丸いピザの生地の端(円の縁)を丁寧に作っておきさえすれば、仕事の半分は終わったようなものだ」と。

「ほら、どうだ、ピザ職人もオレと同じことを言っている」。おじいちゃん教授のその自慢げな口調に僕達はポカンとしたものでしたが、何かを評価する仕組みを作りだす時にも、写真やピザと同じことが言えると思います。

“枠”が重要──。

学校の生徒の通知表、何かについての感想を求めるアンケート用紙、もちろん野球選手のスカウティングレポートも、それらには全て評価の枠が存在しています。このフォーマットが完成した時点で評価の半分は終わっている、としても、過言ではありません。

枠、つまり評価システムとは、“各評価項目”、“各評価項目の構成”、“各評価項目の評価基準”を定めたもので、それを貫く価値観が存在していなくてはならない、というのが僕の考えです。これら一つ一つについて、これから詳しく紹介していきます。

評価システムが必要でない評価対象は?


でもその前に一つ、疑問に答えておきたいと思います。それは、そもそも評価の仕組みが必要でない評価対象も中にはあるのでは?という疑問です。

例えばあなたの会社で、商品を売る外回りの営業部員は“売上”で評価をすればいいのでは... と思うかもしれません。担当地域によって多少の差はあるかもしれませんが、そういった条件が揃っているのであれば、「とにかくより多く売った者がより優れている、以上」でいいのではないか、と。

まず、“商品をより多く売ること”を営業部員の評価としてしまって果たしていいのか、という根本の問題はありますが、それは後の議論に譲るとして、それでもこの考え方には問題があります。

なぜ、“分”けて“析”する必要があるのか。それは以前にも述べた通り、評価の仕組みを作っていくことの目的は、成功や失敗を振り返り、知見を貯めていくことにあるからです。

ずっと部のエースだった人が急に成績が悪くなったら、その原因はどこにあるのか? あるいは、その人が転職することになってしまったら、そのノウハウはどうやって引き継いでいけばいいのか?

こういったことを知るためにも、少し面倒ですが、評価の仕組みを作っていく必要があるのです。

評価の仕組み作り── 先ずは「大項目を作る」


評価の仕組みを作っていくための第一段階として、先ずは細分化した項目を作っていく必要があります。

先ほどと同様、会社の商品を売る営業部員の例を考えてみましょう。一般に営業、という仕事で最初に思い浮かぶのは、やはりコミュニケーション能力でしょうか。お客様と商談を進めていくために重要です。

また、「この地域のこういった人達がこの商品を欲しているかも、だからこういう売り方をすればいいかも」といった洞察力も求められるのではないでしょうか。

それから、体力も要素の一つでしょう。外回りの営業などは特にそうですね。
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編集=宇藤智子

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