バイオマスの最大活用に向けた今後の課題
さらなるバイオマス活用の推進に向けて課題も山積している。たとえば、木質資源の活用の課題としては、真庭市では再生可能エネルギー100%を目指してさらにエネルギー利活用の展開を検討している。
利用を拡大するためには、資源(燃料となる木質バイオマス)の確保が必要だという。まだ活用が進んでいないが、資源としては豊富に存在する広葉樹の活用などの検討が始まっているところだ。
また、上述の食品廃棄物のより一層の再資源化に向けて、分別がキーワードとなる。事業者や家庭での役割が今後求められるが、どう乗り越えるかが知恵の出しどころとなってくる。
さらには、真庭市だけに限らない問題ではあるが、一部野積みされている稲わらや焼却されている剪定枝などの廃棄物、真庭バイオマス集積基地設立後も残る林地残材など、まだまだバイオマス利活用の「余地」は多くある。
新たな鼓動
バイオマスや液肥以外にも、ここ最近次々と新しい動きが生まれている。真庭里海米もその一例だ。里海米自体は岡山県全体で取り組まれており、真庭産のお米を真庭里海米と呼ぶ。
真庭里海米紹介パンフレット(提供:真庭市役所)
真庭里海米のほ場(提供:真庭観光局)
真庭里海米は、瀬戸内海で育った蠣殻に含まれるミネラルを養分として利用され育てられたお米である。つまり、「海」から「山」に栄養を戻す取り組みである。
牡蠣が健全に育つためには山のミネラルが豊富でなければならないことは知られているが、山の恵みを享受した海で育った牡蠣(殻)を再び山に戻すというのが、この取り組みのポイントだ。
他にも、「真庭なりわい塾」という、真庭市をフィールドに昔から受け継いできた暮らしや文化から新たなライフスタイルを築くという場所、30年前に生産されなくなった丸太棒の復活、薬草ギフト開発、空き家活用、後編で述べる観光と地域づくりを兼ねた動きなど、例を挙げればキリがない。
ここでの原動力もやはり民間だ。そもそも真庭市のバイオマスの取り組み自体が「民間主導」であったように、豊富な自然資本を使って経済を循環させるための視点が早くから民間に根付いているように思えてならない。真庭の取り組みは、中山間地域における循環のあり方の一つのスタイルを示しているようである。
このように、バイオマスの取り組みを始め、持続可能な地域を目指した取り組みを推進しており、「SDGs未来都市」へも選定されている。それぞれの活動が、経済・社会・環境のそれぞれの側面へ好影響を与えつつ、SDGs達成へも貢献しているという。
【参考】
・2010年の真庭人の1日
・真庭なりわい塾
・真庭バイオマス産業杜市構想
・岡山県真庭市SDGs未来都市計画(2021〜2023)
・消化液の肥料料利用を伴うメタン化事業実施手引(一般社団法人地域環境資源センター)
※この記事は、2022年4月にリリースされたCircular Economy Hubからの転載です。