地域で資源・エネルギー循環。バイオマスの取り組み
真庭市におけるバイオマスの取り組みは多種多様だ。代表的な取り組みを下記に挙げる。
木質バイオマスのエネルギー・燃料としての有効活用
木質バイオマスのエネルギー・燃料としての活用は、同市の取り組みを象徴する。もともと利用が難しい林地残材や端材は山に捨てられ、加工の際に発生するかんな屑などの木質副産物は産業廃棄物として廃棄されていた。一方で、木材乾燥用のバイオマスボイラを導入する製材所が増え、バイオマスエネルギー利用の展開においては、木質資源の安定調達・供給が課題となっていた。そこで2008年、バイオマス原料供給を目的とした全国初の拠点である真庭バイオマス集積基地を建設。ここに集積された年間11万トンの木質副産物(未利用丸太、製材端材、樹皮など)を用途別に加工(チップ化など)し、製紙工場や畜産農家、そして2015年に建設された真庭バイオマス発電所に供給している。
木質バイオマス流通体制(バイオマス産業杜市 “真庭”ツアーガイダンスより(真庭観光局提供))
同基地ができる前は、収集コストや含水率の高さ、配送システムなどの課題があった。基地建設後は、地域で合意された燃料価格を設定し、含水率を抑え質の高い燃料を供給するなど、地域のエネルギー・経済循環の新たな付加価値を生むことに貢献した。環境面では、石油代替効果によるCO2排出削減(104300t-CO2/年(2017年度推計値))に加え、残材の整備によりCO2吸収源としての森林健全化にも寄与しているという。
その後、2015年に稼働した木質バイオマス発電所は、約2万2000世帯分の電力を供給。石油代替による経済効果は、23.5億円に上り、50人以上が関連産業(同発電所含む)において雇用されている。
燃料とマテリアルの用途別に沿った優先順位に基づいて利用を進めることで、環境へのアプローチのみならず、お金の循環、そして雇用をも生み出している。
木質バイオマスのマテリアルとしての有効活用
これまで、本流の木材業をベースとして、木材のさらなる高付加価値化とカスケード利用に向けた取り組みは活発に進められてきた。先述の「2010年の真庭人の1日」では、「セメタント」という自然と同化する環境配慮型コンクリートが描かれていたが、実際に木片コンクリート(チップ・おが粉とコンクリートのハイブリッド製品)が開発され、成果の一つとなった。
その後開始したバイオマスリファイナリー事業の一環として設立した真庭バイオマスラボでは、6つの企業・団体が入居。このラボは、セルロースナノファイバーなどの素材開発、高い品質を持つ高規格木粉(真庭木材事業協同組合)、真庭産ヒノキ由来のリグノセルロースナノファイバー粉体化成功など、新たな素材開発につなげてきた。
真庭バイオマスラボ(写真提供:真庭観光局)
今後はCLTのさらなる普及を含めた木材の需要拡大に努める。CLTとはCross Laminated Timber(直交集成板)の略で、ひき板の繊維方向が直角に交わるように接着した強度の高いパネル材。欧州で発達し、中層住宅の材料として使用されている。
最近の利用例としては、子どもたちの実教材となっている北房小学校や真庭市立中央図書館が挙げられる。現在、日本全体で官民一体となり国産材利用を促進しているが、真庭市としても真庭産CLTを全国各地へ展開していくなど、価値の高い木材の使い方であるマテリアルの利用を多面的に進めていく予定である。
真庭産CLTのサンプル