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2022.04.20 08:00

「バイオマス産業杜市」真庭市から学ぶ、サーキュラーシティ移行に向けたヒント


そのキーワードは「民間主体」である。1993年に、20代後半から40代の地元若手経営者や各方面のリーダーをメンバーとする「21世紀の真庭塾」という組織が創設された。高速道路の建設による地域への影響に対処することが当初の真庭塾の目的だったという。


21世紀の真庭塾の様子(写真提供:真庭観光局

真庭塾では、町並景観保存と循環型地域社会に向けて議論。出てきたアイデアの一つが、バイオマス。民間が主体となり、やがては「真庭市木質資源活用産業クラスター構想」の策定と「21世紀の真庭塾」のNPO法人化など推進体制を整備していった。その後「真庭バイオエネルギー社」、「真庭バイオマテリアル社」など事業基盤が拡大。この間官民連携も強化されている。

市全体としては、2006年に木材副産物以外の家畜排泄物や食品廃棄物も含めたバイオマスを活用するためのバイオマスタウン構想を打ち出し、国からバイオマスタウンとして認定。その後も、有機廃棄物資源化や後述するバイオマスツアー、さらなるバイオマス利用促進の新たな将来ビジョンを策定して、2014年にバイオマス産業都市に認定、真庭バイオマス発電所の稼働など、着実に取り組みを進めてきた。

このように地元民間事業者が起点となり、行政を巻き込んでいったことが歴史からもわかるだろう。

「ほとんど実現できている。」1997年時点に描いた2010年の真庭の姿


1997年の時点で2010年の真庭市民のある1日を描いた『2010年の真庭人の1日』は特筆すべきものだろう。



2010年の真庭人の1日

60代の「造り酒屋の均ちゃん」の視点で、2010年の真庭の1日がストーリーとして描かれている。環境再生を軸にシビックプライドを醸成するような構成だ。「自然を生かした環境教育」「グランドワーク(住民・行政・企業が一体となった環境改善活動)」「製材業の自家発電による温水プールや電気供給」「日が経つと自然に戻るセメント『セメタント』」「淡水魚の回帰」などの具体的な活動も盛り込まれている。真庭市役所の森田さんによると、これらの8割程度は実現できているというから驚きだ。
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文=那須清和

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