ビジネス

2022.04.16 12:00

暗黙知は要らない、飲食ビジネスに汎用性を。「俺ハン」から行列店「挽肉と米」へ

炭火焼ハンバーグと炊きたてご飯専門店「挽肉と米」は、連日長蛇の列で賑わう

山本昇平は、2005年に「俺のハンバーグ山本」で飲食業界に参入すると、ハンバーグ単品にこだわった店舗展開で瞬く間に旋風を巻き起こした。その後、山本の店とは関係のない「俺の」を冠した店が増え始めると、さっさと「俺の」を店名から外し、「山本のハンバーグ」と改名して店舗を増やしていく。

自分にとって「美味しいハンバーグ」の提供をめざす山本は、さらに2019年に新たな業態を模索するプロジェクトをジョイントベンチャーでスタートさせる。その最初の店舗である「挽肉と米」を東京の吉祥寺でオープンすると、早朝に配られる入店するための整理券を求めて、長蛇の列ができる人気店となった。

このところメディアでも取り上げられることも多く、飲食業界の風雲児ともなった山本に、前編にひきつづきそのユニークなビジネスデザインと海外進出をも視野に入れた新たな飲食業のあり方について、さらに詳しく聞く。

前編:「俺のハンバーグ」から「挽肉と米」、中食へ。山本昇平が「挽肉」にこだわる理由


「山本のハンバーグ」と新業態の「挽肉と米」では、訴求しようとするお客様のペルソナについて、分けて考えるということはしていません。

「挽肉と米」は、事業設計の段階から「挽きたて 焼きたて 炊きたて」というコンセプトで大きな違いはあるものの、供するものがハンバーグであることは「山本のハンバーグ」と同じで、どちらもお客さまとしては「ハンバーグを食べたい人」「ハンバーグが時々食べたくなる人」を想定しており、年齢やそのシーンを問うことはしていません。

そもそも「ハンバーグ1種類」に商品を絞っているので、どちらの店舗にもハンバーグが食べたい人しか来ない。ハンバーグ専門店という業態で市場に打って出ることで、お客様が「何に期待しているのか」は明確になるし、その期待に対して答えやすいし、パフォーマンスも出しやすいのです。


(写真=曽川拓哉)

最初、「俺のハンバーグ山本」という専門店を作ると決めた時に、「みんなに来てほしい」という気持ちがありました。だからみんなが好きなもの、みんなが食べたいと思うもの、かつ超メジャーなものをということで考えました。それで、「ハンバーグ」にたどり着いたのです。

ただ「挽肉と米」では、近隣の方々へのご迷惑を最小限に抑えると同時に、その近隣の方々のご来店が有利になるように「整理券制」にしていたり、お客様の前の専用炭焼き網に焼き台から焼きたてを乗せられるよう焼き手と等距離になる「楕円形(渋谷店)」、「U字形(吉祥寺店)」の全席カウンター」にしていたり、焼き台の周りに一定数座っていただくために座席間隔もあまり広くはなかったり、「山本のハンバーグ」との違いはどうしても生まれてきます。

ですから、例えばベビーカー連れのお客様など、「使いにくく感じる」層は生じてしまっていると思いますが、食べたいと思ってくれたお客様方はそのハードルを超えて、たとえばお子さんを預けて、あるいはお子さんが大きくなってから来てくださると思っています。

ライセンスとしてスケールした「山本のハンバーグ」


たとえばITの業界なら、開発にいくらお金や時間がかかっても、たとえばアプリやプラットホーム開発ぐらい汎用性が高くなれば回収スケールはメガ級になります。しかし、飲食でスケールしようとすると、事情はやや異なります。
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文=石井節子

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