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2022.04.15 08:00

「俺のハンバーグ」から「挽肉と米」、中食へ。山本昇平が「挽肉」にこだわる理由

石井節子
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写真提供:「挽肉と米」

山本昇平が2005年に立ち上げたハンバーグ専門レストラン「俺のハンバーグ山本」は、名物メニューの「俺のハンバーグ」が評判を呼び、行列のできる洋食屋として一世を風靡した。

しかし2010年頃から、山本の店とはまったく関係のない「俺の」を店名に冠した飲食店が続々とオープンする。それもあり、「俺のハンバーグ山本」は2016年6月に全店舗を「山本のハンバーグ」に名称変更。いわば、自らが立ち上げて、育てた「俺の」ブランドを惜しげもなく捨てたのだ。

ついで山本は、2020年6月に新たな業態の「挽肉と米」の1号店を東京の吉祥寺でスタートさせる。「挽きたて 焼きたて 炊きたて」というシンプルなコンセプトで立ち上げた店だが、入店するための整理券を手に入れるため、毎朝、長蛇の行列ができる人気店となる。

また、今年1月には「山本のハンバーグ尾山台研究所」を立ち上げ、食物販向けの商品製造キッチンを併設。冷凍で商品を全国に販売する「中食EC」にも参入していくという。

昨年12月に放送されたテレビ情報番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)にも出演して話題を呼んだ山本に、「俺のハンバーグ山本」から「挽肉と米」に至る経緯、そして新たに参入しようとしている「中食EC」への展望について聞く。

後編:暗黙知は要らない、飲食ビジネスに汎用性を。「俺ハン」から行列店「挽肉と米」へ
 

「俺のハンバーグ山本」という店を出したのは23歳の時でした。常識的な「正しいハンバーグ」のつくり方とか、「こういうハンバーグが美味しい」という基本など気にすることなく、とにかく絶対「自分がいい」と思うもの、「自分が美味しい」と思うもので勝負しようと始めました。

そのことを自分自身で肝に銘じるためにも、「俺のハンバーグ山本」という店名をつけたのです。まさに自らの「初心」を託した名前だったのです。

ところが、そのうちまったく関係なく「俺の」を名乗る店が増えて、「俺の」を捨てるのにはもちろん寂しさや未練はありました。でも、「俺の」がついたお店が続々と開店した頃、僕たちの店に来たことがないお客様、また常連のお客様さえも「同じ系列で、手広く始めたんだな」と解釈されることが多くなりました。

でも実際は、他の「俺の」とは、供する料理のスタイルもビジネスのスタンスも違うので、お客様に誤解をさせるのは申し訳ないと思い、「山本のハンバーグ」に改名することにしたのです。

「俺の」を捨てるのには、もちろん寂しさや未練はありました。それは当然、「愛着ある名前を捨てる」ということでもあり、試練も伴いましたが、お客様にとっては、商品やサービスが変わらなければおそらく屋号はどうでもいいんです。それよりも、誤解を与えない方策を講じるのが先決だと思ったのです。



なぜハンバーグ単品なのか?


実は、「俺のハンバーグ山本」を始める際に、先輩たちからは「今のお前は素人だから単品の、何らかの専門店にするべき」というアドバイスを受けました 。「では何の専門?」と考えたときに、僕には、カテゴリー設定をして、こういうペルソナのカスタマーを呼ぼうといったマーケティング的な発想はまったくなかったのです。

とにかく「みんなに」「全員に」「誰でも」来て欲しいなと思いました。それで、そのためにはどういうメニューがいいのだろうかと考え、思い当たったのがハンバーグだったのです。
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文=石井節子

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