ビジネス

2022.04.15 08:00

「俺のハンバーグ」から「挽肉と米」、中食へ。山本昇平が「挽肉」にこだわる理由


ラーメンと同じで、「ハンバーグ」は日本で独自に進化し、定着した料理、「日式洋食(にっしきようしょく)」です。元々はドイツのハンブルグ地方にあった肉料理が、日本で「ハンバーグ」になったといわれています。


(写真=曽川拓哉)

例えば、「ナポリタン」も、日本人が日本にある食材でつくった洋食ですよね。トマトソースがないからケチャップで、パプリカがないからピーマンでつくったわけです。

それと同じで、「オムライス」も「焼き餃子」もみんなが好きなメニュー。そして結局、僕たち日本人がお腹の空いた時に真っ先に思い浮かべるのは、そういう食べ慣れている、ちょっとワクワクする、子供の頃の思い出とも深く絡み合う料理ではないでしょうか。

そして、そういう日本ならではの、ナポリタンとかオムライスとか焼き餃子とかそういう誰もが知っているものに改めて集中して手をかけてやれば、勝負になるな」と考えました。



「挽肉と米」では新しい事業への挑戦


そして、その「きちんとつくる」を突き詰めたのが、2019年3月にジョイントベンチャーで立ち上げた「挽肉と米」だったのです。それまでの「山本のハンバーグ」と同じハンバーグ専門店ですが、コンセプトはまったく異にするプロジェクトでした。

「目の前で」ご飯を炊き上げたり料理を仕上げたりといった、単価が高い業態では可能な「できたてを提供するサービス」の体験を、「挽肉と米」では、普段から食べられる価格で提供したいと思ったのです。

実は、プロジェクトの立ち上げから1店舗目の吉祥寺店がオープンする2020年6月までは、「挽肉と米 おろしハンバーグ専門車」というフードトラックを走らせたりもしました。吉祥寺店の開店が思ったより早く叶い、運転の手が空かなくなってしまったので、早々に切り上げたのですが。

「挽肉と米」では、90グラムの挽肉を3回に分けてお客様に供します。お客様が1個目を食べ終わったところで、2個目の「ハンバーグ」を出す。それもハンバーグの焼き手から、直接、目の前の専用炭焼き網に乗せられるという趣向です。

「山本のハンバーグ」と「挽肉と米」では、それぞれで供するハンバーグは、つなぎの配合やお肉の配合自体が違います。山本のハンバーグは「家庭の味」が発想のベースにあるので、みんながおそらく食べ慣れた合挽きの挽肉です。

「挽肉と米」では、100%牛肉を使用しています。実は、事前にとったアンケート調査で「『挽肉』って聞くと、どんな肉を思い浮かべますか?」と聞いたら、ほぼ100%「牛肉だと思う」という答えがかえってきた。それならば、牛肉100%でいくことがお客様の期待値に添えやすいだろうと思ったからです。

ハンバーグへの火入れも、「挽肉と米」では「山本のハンバーグ」とは違い、炭火で焼いています。肉感がしっかり出るよう、つなぎは少なめ、牛肉の部位の配合にも工夫を凝らしています。
次ページ > 「山本のハンバーグ尾山台研究所」を開設した理由

文=石井節子

ForbesBrandVoice

人気記事