ビジネス

2022.04.16 12:00

暗黙知は要らない、飲食ビジネスに汎用性を。「俺ハン」から行列店「挽肉と米」へ


ただそれもあって、早くも類似店がたくさんできています。

もちろん、そもそも「創造は模倣から」です。別のクリエイティビティをはらむ「創造」が模倣から生まれれば、業界の成長につながります。

しかし、「良さそうな」「客足のいい他店」をただコピーすることで止まる模倣は、業界の成長を鈍らせると思います。そして、参入障壁が低く裾野が広い、という飲食業界の性質が、業界のクリエイティビティを育ちにくくしているのではないかと思うんです。

「著作権」が存在する他業種では、コピーは堂々とは行われない。「他業種の当たり前」を、飲食もそれこそ取り入れていくべきではないでしょうか。

海外展開で利益率60%の飲食企業をめざす


「挽肉と米」がもともと目指していたのは、海外に店を出すことでした。「コンテンツでスケールする」ことを考えた場合、日本だけでやっていると消耗戦になってしまう。「売上げを伸ばすために店舗を作っていく」ビジネスモデルの場合、売上げ増に比例して社員数も増えるので、利益率は他業界に比べると低水準を継続することになる。

それを改善するための方法論として、従業員数を増やさずに再現性を上げること、そして職人に頼らない店づくりでありながら「食べる前にすでに美味しさを感じる」くらいコンセプトが明確でわかりやすい店であること、その2点を徹底して追求しました。

結局、お客様はわかりやすく期待しやすいサービスに惹かれるし、その期待にこたえてもらった経験にこそ、納得、満足するのだと思っています。

そして、日本の何十倍も人口がいる海外でライセンスビジネスがうまく回り出せば、コストを効率化しながらスケールする、つまり100、200ではなく1000、2000という店舗数でさえ実現できるかもしれないのです。

そういう「コンテンツのスケール化」を海外で実装できれば、日本で頑張ってブランドをつくっている人たちにも多くの見返りをもたらすことができる。究極には、「飲食業だけど利益率60%です」というところまでやりきりたいと思っています。

「ハンバーグ」は、いわば「日本的な洋食」というカテゴリー。日本では認知度が高いものの、海外での認知度はほぼない。でも挽肉を使った料理は世界のあらゆるところで存在しています。

「挽肉と米」で実践しているような「目の前で焼かれたものが出てくる」ことに対して感じる魅力は世界共通ですし、目の前で炊き上がったご飯が出てくることも、体験として喜んでもらえると思います。
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文=石井節子

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